研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
バックナンバー
|
初めまして、今年の春から大学院生として「ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ」でクモの発生を研究しています、金山真紀といいます。「真紀」が女の子に多い漢字ですので、名前だけみますとよく女の子と勘違いされるのですが、これで「まさき」と読みます。よろしくお願いいたします。大学4年生の研究室では、水草の系統関係を調べたりしていましたので、分野をがらりと変えたことになります。ラボに来た当初は知らないことばかりで、なにしろ元来ぽけっとしている性格ですから、ラボの研究員の方々、先輩にご迷惑をおかけし、助けられながらもなんとかここまでこさせてもらっています。
今日はそんな私がなぜこのラボに移り、発生学、細胞生物学の分野で研究したいと思ったのだろうか?ということを綴ってみようと思います。
小さい頃から本当に生き物が好きでした。野原に駆け出し、虫や小動物を追いかけ、からかいと親しみをこめて「昆虫博士」「むし博士」「動物博士」などと呼ばれている、学校のクラスに必ず一人はいるような少年でした。図鑑は暇があったら開いて眺めていましたし、生き物の名前も知らない間に色々覚えていました。
そんな少年が唯一しなかったのは標本作成でした。虫をたくさん捕まえてはいましたが、標本にはしたことがなかったのです。標本にすることよりも、私は生き物を飼い、観察することが大好きだったわけです。標本にしてしまったら生き物は死んでいます。
しかし、生き物を実際に飼ってみると、標本では決して知り得ない物語が広がっています。チョウが幼虫からさなぎ、成虫へと変化する。おたまじゃくしからしっぽがなくなってカエルになる。クモが獲物を捕らえる。コオロギが鳴いて自分をアピールし、メスは卵を産む。これらの出来事一つ一つは、生き物がまさに「生きている」ことを実感させます。そこにひたすら不思議さと、感動を感じていたのだろうと思います。生き物が見せてくれる様々な変化の神秘さと美しさに、わくわくしていたのです。
生き物が変化して行くことをみたいと思って、漠然と「進化」というキーワードを追っていたのでしょうか。また、「進化」という方向には、多様性と共通性という生き物のキーワードの両方について、取り組めるのではないかとも思っていました。ただ、系統関係を調べるだけでは物足りない。やはり、「進化」についてのこだわりよりも、生き物が「生きている」と感じながらの研究がしたいという気持ちがあったのです。その感覚と、クモの胚発生に感じた可能性とが絡んで、ほぼ直感的、しかし、確信を持ってこの研究室に行こうと決めたのです。
クモの細胞の動きを動画で初めて見たとき、天体の星の動きのように感じ、純粋に「きれいだ」と思ってしまいました。なんでも感動から入ってしまう、私の悪い癖ですが、この感動の気持ちが何かいい方向につながらないかなあと考えている毎日です。
今日もまた、クモの卵が産まれていました。今でも、卵はどんどん体作りの変化をすすめていっていることでしょう。一見すると、ただの丸い卵の中で、複雑なことが起きています。
このクモの卵の変化の謎から、節足動物の謎に迫り、少しでも他の動物たちとの関係をさぐれたら、と考えています。
|
[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 金山真紀]
|
ラボ日記最新号へ