研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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新年あけましておめでとうございます。
今年は戌年ですね。うちの家族には、戌年が私を含めて3人いるので、年齢が覚えやすくて便利です。干支があっていいなと思うのは、この時と、年賀状のデザインに困ったときですね。
私たちはアゲハチョウの産卵刺激物質受容システムを解明するべく、ここで研究をしていますが、アゲハチョウは、生理的にも生態的にも、そして形態的にも非常に興味深い生き物だと思います。そのため、全国にたくさんのアマチュア研究家の方が尽力して、飼育や採集を通して数多くの研究成果が発表されています。私は、研究室の中で最新の機器や生物工学の技術を使って研究をさせて頂いているわけですから、このような全国の研究家の方にはやりたくてもできない研究を、そして「それが知りたかったんだよ!」と言ってもらえるような成果を残したいなと思います。
自宅では難しいことの一つとして、季節を通してチョウを飼育することがあります。私たちの研究室では、材料供給のために冬場も飼育室の中でアゲハチョウたちを飼育しています。こんなことができるのも、きちんと温度管理が可能なのと、人工飼料での飼育が上手くいくようになったからです。今はミカン味の飼料しかないため、飼育しているのはナミアゲハ、クロアゲハ、シロオビアゲハの3種です。
メインの研究材料はナミアゲハなので、常時100匹近くが暮らしています。クロとシロオビは、その半分くらい。研究室のメンバーで分担しています。飼育というのは、無限大に手をかけることができるので、人によっては1日にかける時間の割合がずいぶん違ってきます。おそらくこれは、性格(個性)の問題。私は、時間がかかる人に分類されます。でも、飼育の他にやること(実験やセミナーや就職活動)がたくさんあるので、時間を上手に使えるように気をつけています。(飼育にこれだけ時間をかけられるのも、本職で研究しているからですね。)
研究室によっては、飼育を当番制にしたり、専門の方にお願いしたりすることもあるようです。しかし、私は自分で飼育するのが良いなぁと感じています。材料として、「はい!」と手渡されるのではなく、卵を採るところから観察していることでたくさんの発見があります。すでに本に書かれていること、本に書く必要もないような小さなこと、主観的なこと(「こいつは美人だな〜」など)、もしかしたら大発見(!?)…などなど。毎日とても楽しいです。
「愛着がわいて、解剖とかできないんちゃう?」と、よく聞かれますが、そこは生物学をやっている研究者として割り切っているつもりです。かなり愛情を注いで育てたチョウたちに対して、脚を取ったり、注射したり、サナギを開けたり、いわゆる「惨い」ことをたくさんしています。でも、そこで躊躇していると、実験に失敗して、結局チョウを無駄にすることにつながります。
私は、アゲハチョウに対して「ほんまに、おもろいな〜」という気持ちと、「研究に付き合わせて、申し訳ないです」という気持ちの両方を持ちつつ、日々研究生活を送っております。
新年早々、少しブラックな一面を紹介してしまいましたが、ご理解いただけると幸いです。
本年も、どうぞよろしくお願いします。
元旦
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[昆虫と植物の共進化ラボ 山田 歩]
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