研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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先日(9月18日)、研究員レクチャーを行いました。たくさんの方が参加して下さり、最後の質疑の時間も多くの発言をいただき、私自身とても勉強になりました。この場をかりて御礼申し上げます。
さて、今回のレクチャーでは話の中頃に、植物成分を使うと、チョウがプラスチックの葉に対してでも卵を産むという模擬実験を行いました。「百聞は一見にしかず」と言うことで、ぜひみなさんにも実験の一端を見ていただければと思ったからです。とは言うものの、必ずしもチョウの発生時期が上手くレクチャーの時期と一致するわけではありません。今回模擬実験に使ったチョウも、羽化後2週間以上経過した古い個体ばかりでした。そのため模擬実験を始める前は、もし卵を産んでくれなかったらどうしようかと少し心配していました。しかし、実際に始めてみるとこちらの予想以上に植物成分を塗ったプラスチックの葉に卵を産んでくれ、ホッと一安心。参加していただいたみなさんにチョウが産卵する姿を見ていただけました。
実は8月に行われたサマースクールでも同様のことを行いました。その時は卵を産んだものの、こちらが期待していたほどの強い反応は示してくれませんでした。このように必ずしもこちらの期待通りに動いてくれないチョウに悩まされることはしばしばあります。例えば飼育一つとってもそうです。幼虫の世話などは、大切に育てなければと思い手をかけすぎるとかえって死んでしまい、そうかと言って手を抜きすぎると死んでしまいます。その他にもわずかな温度の違いで交尾が上手くいったりいかなかったりなど様々なケースがあります。チョウからみれば人の言うことを聞く理由などないでしょうが、こちらの気持ちとしては「もう少し言うことを聞いてくれれば・・・」とチョウに翻弄されることもよくある話です。
こんなチョウを実験材料として用いるようになり今年で6年目となりました。その間、多くのチョウを見ていると素直なチョウ、落ち着きのないチョウ、優柔不断なチョウと(表現はかなり自分の主観が入っています)同じ種の中でもいろいろなチョウがいることがわかりました。個体差というよりは個性という表現がピッタリだと思います。きっと研究員レクチャーの時に用いたチョウは素直なチョウで、サマースクールの時に用いたチョウは少しわがままなチョウだったのではないでしょうか。
こんな個性豊かなチョウ達ですから、6年間見続けていても見飽きることはありません。毎日いろいろな謎を投げかけてくれます。きっと今後それらすべてを理解することは難しいでしょう。ただ、チョウの持っている不思議さ、すばらしさを少しでも理解でき、みなさんにお伝えできればと思い日々研究に励んでいます。
[昆虫と植物の共進化ラボ 奨励研究員 中山忠宣]
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