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ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。

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【生命の海科学館】

小田広樹

 私たちは動物の進化の歴史を知りたいと考えて研究をしています。動物の歴史を知るためには2つの方法があって、ひとつは動物の化石を見つけて調べること、もうひとつは現在の様々な動物を比較してその関係性を調べること。私たちの研究室は、「ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ」と呼んでいますが、後者の方法をとっています。しかしながら、「過去」を知ることにはいつも限界を感じています。いくらハエとクモを比較しても、例えば、古生代に繁栄した三葉虫のことはわからないのではないか!?と。
 先日、愛知県蒲郡市に最近新しくできた「生命の海科学館」に行って来ました。今から5億2〜3千年前の、様々な形の多細胞動物が爆発的に誕生したカンブリア紀と呼ばれる時代の、学術的に極めて貴重な化石が数多く展示されていました。特に、節足動物と思われる動物の化石は豊富に揃えられており、ひとつひとつに古生物学の専門家による詳しい説明が付けられていました。私たちが比較しているハエとクモは陸の動物ですが、それらの祖先が海にいた時代はどんな動物だったのか? 現在のエビの仲間とどこが違うのだろう? 何か手がかりが目前の化石の中にあるはずだ。そんなことを思いながら、展示されている化石を入念に見て回りました。
 化石でわかるのは「過去」のほんの一部で、動物と動物の関係性を知るには限界があります。化石の研究と現在の動物の比較研究は、互いに弱いところを補い合って動物の進化の歴史を明らかにしていくことでしょう。


三葉虫の化石


[ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 研究員 小田広樹]

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