ラボ日記
2022.09.15
考える会
高校生物の先生方を対象に「考える会」という企画を行なっています。コロナ前に始めた企画で、コロナの蔓延共に休止しておりましたが、今年から再開しました。その内容についてすこしご紹介いたします。
近年の理科教育では、「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」が求められるようになり、入試問題も「知識を問う」から「考え方を問う」へと移ってきたということです。この動きを受けて、先生方も自らが「謎を見出して理解する」という経験を積む必要性を感じるようになってきたということですが、では何をどうすればいいのか具体的なモノが見えないのが現実でもあるようです。
橋本たちは、前世紀初頭から教科書に載っていて、ほぼ事実であると信じられている「両生類の原腸形成モデル」とは全く異なる「新しい原腸形成モデル」を提唱しています。このモデルを提唱するきっかけとなったのは、私たちが行なったさまざまな実験結果の中に教科書のモデルでは説明できない事実が含まれていたことです。「え、これはおかしい」「もしこの結果が正しいのなら、現在のモデルは間違えている」となり、これまでの「事実」とともに新しく得られた「事実」をも同時に説明できるモデルを構築したのです。モデルを作っていく過程は、事実を並べ直して作業仮説を立て、その仮説が正しいかどうかを検証するという作業を繰り返します。私たちは、小学生でも理解できる漫画のような実験で仮説の検証をしてきました。どうもこれが良かったようです。私たちの研究過程を実際に頭の中で実感することが、高校生物の先生方がいま求めている「経験」にうってつけであると判断され、これも「考える会」のきっかけのひとつになりました。
「考える会」では、3〜4人ずつの班に分かれていただき討論します。面白いアイデアがあれば全体で共有し議論します。「事実を否定することはできない」ので、モデルに矛盾が生じている場合には「事実の解釈に瑕疵がある」と考え、「先入観なしに事実だけを見る」ことから始めます。まずは、教科書モデルが提唱される原因となったであろう当時の実験・観察事実をご紹介し、なぜこのモデルが正しいと認識されるようになったか考えます。次に、このモデルでは説明できない新しい結果をお見せして、ひとつひとつを丁寧に意味付けすることで、過去のデータから新しいデータまで全てを満足させるモデル(仮説)を考えていただきます。見当違いの仮説もあれば、的のど真ん中を射抜いている仮説も出てきます。「そんな方向で考えたこともなかった」という意見もでて橋本自身がびっくりさせられます。これらを議論によって研ぎ澄まします。
議論を闘わせることで一つの仮説に収斂させたら次はその検証作業です。その仮説が正しいのか間違っているのかを実験的に検証する方法を考えます。検証実験も、まったく意味をなさないものもあれば、一見的外れに思えて実は正鵠を射るものもあります。本来ならこれらのアイデアを実際に実験しなければなりませんが、設備も必要ですし何よりも時間がかかりますので、その場で実験はしていただけません。しかし、私たちは何十年もこの問題に取り組んでいますので、先生方がその場で思い付く実験のほとんどは過去に考えたことがありますし、そのうちの多くは実際に行なってもいますから、皆様からいくつかのアイデアが出て議論が煮詰まった時には、「その実験をやってみたらこうなります」と料理番組のように「出来上がり」をお見せすることができます。その結果をもとに、皆様の「仮説」を検証するというわけです。
仮説が間違っていたら、新たに得られた実験結果とともに再度考え直します。仮説が正しかったとしてもそれで終わりではありません。仮説は全体の中のごく一部を説明するに過ぎませんので、他の部分の説明(仮説)も必要になるでしょうし、仮説が正しかったが故に古いモデルとの間で新たに生じる矛盾点を説明しなければなりません。
時間に制限があるので、途中で議論を止めたり、ヒントを出したりしますが、あっち行ったりこっち行ったりしながらも皆さん同じ方向へと向かっていきます。最終的には、「答え合わせ」として橋本が行なってきた実験結果や現時点での解釈を説明して終わります。「いっぱい考えて、刺激的でした!」「また参加したい」という先生方からのコメントにも現れているように、先生方も心から楽しまれたようですが、橋本たちもこれまで考えたこともないアイデアや仮説に出会って毎回が驚きと興奮の経験となります。
先生方との交流はこれからも続けていきたいと思っていますが、同じことを高校生がやったらどうなるのだろう?という興味もあります。また、生物教育に関わっていない「普通の方々」はどのように考えるのだろうか?興味は尽きません。皆さんはこういうことに興味はありますか?
近年の理科教育では、「何を学ぶか」ではなく「どのように学ぶか」が求められるようになり、入試問題も「知識を問う」から「考え方を問う」へと移ってきたということです。この動きを受けて、先生方も自らが「謎を見出して理解する」という経験を積む必要性を感じるようになってきたということですが、では何をどうすればいいのか具体的なモノが見えないのが現実でもあるようです。
橋本たちは、前世紀初頭から教科書に載っていて、ほぼ事実であると信じられている「両生類の原腸形成モデル」とは全く異なる「新しい原腸形成モデル」を提唱しています。このモデルを提唱するきっかけとなったのは、私たちが行なったさまざまな実験結果の中に教科書のモデルでは説明できない事実が含まれていたことです。「え、これはおかしい」「もしこの結果が正しいのなら、現在のモデルは間違えている」となり、これまでの「事実」とともに新しく得られた「事実」をも同時に説明できるモデルを構築したのです。モデルを作っていく過程は、事実を並べ直して作業仮説を立て、その仮説が正しいかどうかを検証するという作業を繰り返します。私たちは、小学生でも理解できる漫画のような実験で仮説の検証をしてきました。どうもこれが良かったようです。私たちの研究過程を実際に頭の中で実感することが、高校生物の先生方がいま求めている「経験」にうってつけであると判断され、これも「考える会」のきっかけのひとつになりました。
「考える会」では、3〜4人ずつの班に分かれていただき討論します。面白いアイデアがあれば全体で共有し議論します。「事実を否定することはできない」ので、モデルに矛盾が生じている場合には「事実の解釈に瑕疵がある」と考え、「先入観なしに事実だけを見る」ことから始めます。まずは、教科書モデルが提唱される原因となったであろう当時の実験・観察事実をご紹介し、なぜこのモデルが正しいと認識されるようになったか考えます。次に、このモデルでは説明できない新しい結果をお見せして、ひとつひとつを丁寧に意味付けすることで、過去のデータから新しいデータまで全てを満足させるモデル(仮説)を考えていただきます。見当違いの仮説もあれば、的のど真ん中を射抜いている仮説も出てきます。「そんな方向で考えたこともなかった」という意見もでて橋本自身がびっくりさせられます。これらを議論によって研ぎ澄まします。
議論を闘わせることで一つの仮説に収斂させたら次はその検証作業です。その仮説が正しいのか間違っているのかを実験的に検証する方法を考えます。検証実験も、まったく意味をなさないものもあれば、一見的外れに思えて実は正鵠を射るものもあります。本来ならこれらのアイデアを実際に実験しなければなりませんが、設備も必要ですし何よりも時間がかかりますので、その場で実験はしていただけません。しかし、私たちは何十年もこの問題に取り組んでいますので、先生方がその場で思い付く実験のほとんどは過去に考えたことがありますし、そのうちの多くは実際に行なってもいますから、皆様からいくつかのアイデアが出て議論が煮詰まった時には、「その実験をやってみたらこうなります」と料理番組のように「出来上がり」をお見せすることができます。その結果をもとに、皆様の「仮説」を検証するというわけです。
仮説が間違っていたら、新たに得られた実験結果とともに再度考え直します。仮説が正しかったとしてもそれで終わりではありません。仮説は全体の中のごく一部を説明するに過ぎませんので、他の部分の説明(仮説)も必要になるでしょうし、仮説が正しかったが故に古いモデルとの間で新たに生じる矛盾点を説明しなければなりません。
時間に制限があるので、途中で議論を止めたり、ヒントを出したりしますが、あっち行ったりこっち行ったりしながらも皆さん同じ方向へと向かっていきます。最終的には、「答え合わせ」として橋本が行なってきた実験結果や現時点での解釈を説明して終わります。「いっぱい考えて、刺激的でした!」「また参加したい」という先生方からのコメントにも現れているように、先生方も心から楽しまれたようですが、橋本たちもこれまで考えたこともないアイデアや仮説に出会って毎回が驚きと興奮の経験となります。
先生方との交流はこれからも続けていきたいと思っていますが、同じことを高校生がやったらどうなるのだろう?という興味もあります。また、生物教育に関わっていない「普通の方々」はどのように考えるのだろうか?興味は尽きません。皆さんはこういうことに興味はありますか?
橋本主税 (室長(〜2024/03))
所属: 形態形成研究室