1. トップ
  2. 語り合う
  3. 研究館より
  4. RNAにノーベル賞2

研究館より

表現スタッフ日記

2024.10.16

RNAにノーベル賞2

ちょうど昨年の10月中旬にも日記の担当で、「RNAにノーベル賞」というタイトルでカリコーさんとワイスマンさんの受賞について書きました。最後は「まだまだ、RNAから目が離せません」と締め括ったのですが、今年も生理学・医学賞はRNA、ビクター・アンブロスさんとゲイリー・ラブカンさん受賞となりました。受賞の対象は、マイクロRNA(miRNA)、呼び名の通り22塩基程度の短いRNAです。昨年の受賞は、タンパク質合成の配列情報を伝えるmRNAでしたが、miRNAは、自分の配列と相補的な配列を持つmRNAに結合して、タンパク質の合成を調節する役目をもちます。

正直なところ、線虫から発見された短いRNAの研究は、2006年にRNA干渉でアンドリュー・ファイヤーさんとクレイグ・メローさんが受賞しており、論文の発表は1998年と今回のmiRNAの論文の1993年より後なので、また短いRNAの受賞は少し意外でした。もっともRNA干渉は、当時遺伝子の機能を阻害する技術として欠かせないものでしたので、そちらの評価かもしれません。実際、研究館のクモやチョウの研究も、RNA干渉の実験で大きな進展がありました。今回改めてmiRNAの受賞となったのは、昨今のRNAの多様な機能の発見を振り返り、その先鞭をつけた研究を評価したことと思います。miRNAは、動物にも植物にも存在し、特に発生や細胞分化で多数の遺伝子を同時に制御する働きをもちます。タンパク質のように翻訳、フォールディング(こちらは化学賞です)を経ずとも相補的な塩基配列をターゲットに働くことができるRNAは、小回りのきく道具として多細胞生物の進化に役立ってきたのでしょう。

さて、今年はノーベル平和賞にも触れないわけにはいきません。ノーベル財団の発表で、NIHON HIDANKYOという文字が目に入りましたが、実は日本語を調べるまで日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)とわからず、恥ずかしながら思いついたのは、「ヒバクシャ」という言葉を国際語にした方々ということくらいでした。ノーベル賞受賞者の科学者もラッセル=アインシュタイン宣言をはじめ、核廃絶を訴えています。2008年に「緑色蛍光タンパク質 (GFP) の発見と開発」で化学賞を受賞された下村脩さんを思い出します。ノーベル賞の講演で被爆者であることを告げられ、研究館が参加した講演会でも、若い人たちを前にどうしても伝えたいこととして、長崎での被爆体験を話されました。聞くだに悲惨な光景ですから、その記憶を呼び起こし、語り続けるにはどれだけの努力をなさっておられるかと思うと、日本被団協の方々には敬意以外にありません。また日本人として心から感謝したいと思います。

選挙の宣伝カーの声が聞こえてきます。候補者の核兵器禁止条約の参加についての考えにも耳を澄まさなくてはなりません。経済学賞のアセモグルさんによると、ダメな政治を選んだ国は衰退するということです。