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研究館より

表現スタッフ日記

2024.08.01

毒と共生

夏ですね。季刊誌117の記事はもうお読みになられたでしょうか。今回、私は晝間敬先生による植物と微生物の寄生と共生のメカニズムの記事を担当しました。

この記事をきっかけに植物の共生関係に興味を持ち、色々調べてみたところ、動けない植物は外敵から身を守るため、葉や根、さらに花や果実に至るまで、二次代謝産物と呼ばれるさまざまな防御物質を合成して上手く他の生物と共生していることがわかってきました。それはタンニンやシュウ酸カルシウム、アルカロイドなどで、他生物の忌避するようなものから捕食者に対して毒になるようなものがあります。

そんな植物の持つ毒にまつわる私のエピソードがあります。大学でサトイモの収穫作業をしていた時、サトイモの茎がきらきらして綺麗だったので齧ってみたら一晩中舌がビリビリして苦しんだことがありました。後々サトイモの毒について調べてみたら、サトイモは人工的に作ることができない針状結晶を有しており、この針状結晶のチクチクによりえぐみが生じるものだと考えられていました。最近では、この針状結晶以外にもプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)が寄与していることがわかったそうです。具体的には、針状結晶により捕食者の組織膜や細胞膜に穴を開け、より効率的にプロテアーゼなどの生理活性物質が標的に届くようになっているのだそうで、私は針状結晶・プロテアーゼによる物理-化学防御を全身で浴びていたんだなとしみじみ思いました。

自分でお菓子を作ってみて初めて、このお菓子にはこんなに砂糖が使われていたんだ!と気づくように、身をもってこそ学びは得られますが、自然界でこんな生き方をしていたら自分はすぐに死んでしまうんだろうなと感じました。そして食べてみるまでわからないのに、草食動物や虫はどうやって、食べたら死ぬもの見分けているんかなと、狭食生動物や今生きている他の生物を尊敬してみたり。

次号の季刊「生命誌」でもまた共生をテーマに色々なお話をお伝えできたらなと思います。どうぞ楽しみにお待ちください!