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研究館より

表現スタッフ日記

2023.06.15

小さな生き物を愛でる

はじめまして。今年3月に館内案内スタッフになったばかりの助友伸子です。

私は顕微鏡観察が大好きです。大学生のときから教師生活を終えるまで、顕微鏡は常に私のそばにありました。ありがたいことに、顕微鏡を長く見ていても目が疲れません。そんな私のお気に入りの顕微鏡観察を紹介したいと思います。
 

水槽や小さな池にあるオオカナダモやマツモなどの水草やアオミドロなどの糸状藻を取り、ぎゅっと絞ります。その水を一滴、10倍の対物レンズ(倍率100倍から150倍)で端から端までじっくりと見ていくと、いろいろな生き物に出会います。鮮やかな緑色のミカヅキモやツヅミモ、オリーブグリーンのフナガタケイソウ、糸状藻に動きを阻まれたゾウリムシやカメノコワムシ、視野をスーッと横切っていく正体不明のプランクトン。40倍の対物レンズ(倍率400倍から600倍)にすると、10倍ではよく見えなかった小さなケイソウや鞭毛をもつ藻類も見えてきて、時間が経つのを忘れてしまいます。

煮干しの胃の中身を水に懸濁し、それを観察すると、イワシが消化できなかったケイソウの殻やミジンコの付属肢、エビやカニの幼生の体の一部などを見つけることができます。海はケイソウが多いので、美しい模様の殻を探していきます。円形のコアミケイソウ、フナガタケイソウ、三角形のミスミケイソウなどなど。時には、押しつぶした冠のような形をしたシリカヒゲムシの殻も見つかります。「宝探しのようで楽しい。」と感想を書く生徒もいました。

偶然にも今月発行の季刊「生命誌」113号の表紙は、ツヅミモやミカヅキモなどの藻類ですね。


これ以外にも、ウニの受精からプルテウス幼生になるまでを徹夜で観察する。オオカナダモの細胞の葉緑体が原形質流動に沿って動いていくようすや、シロツメクサやユリの花粉が発芽して花粉管が伸びていくようすを観察する。タマネギの根端の成長点を染色して、押しつぶし、いろいろな時期の体細胞分裂像を探す。うまく押しつぶせたときには教科書に載っているような分裂像を見ることができます。書き出せばきりがありませんが、どれも見飽きることがありません。

顕微鏡で観察をしていると、そこに見られる小さな生き物や細胞の美しさに見とれ、感動し、探求したくなります。そんなときの私は、堤中納言物語の蟲愛ずる姫君(生命誌研究館の入り口を入って左手の屏風をごらんください。)なのかもしれません。

生命誌研究館ができたころから何度も来ていましたが、ガイドとしては新米です。ご来館いただいた皆さまに生命誌研究館の展示のすばらしさをお伝えするとともに、皆さまと自然や生命について語り合い、素敵な時間を共有していきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。