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研究館より

中村桂子のちょっと一言

2020.06.15

蟲愛ずる姫が舞台に?

今日は、唯今進行中の話にします。東京両国にシアターXカイという小さな劇場があります。そこではプロデューサーである上田美佐子さんの発案で毎年テーマを決めて、世界中から演劇、ダンスなどの参加を求める「国際舞台芸術祭」が開かれてきました。今年で14回。なんと「芸術祭2020」のテーマは『蟲愛ずる姫とBiohistry=生きもののものがたり』なのです。舞台演出家、俳優、ダンサーなどから成る実行委員会があり、テーマはそこでの議論で決まるのですが、その途中で私に相談がありました。このテーマで演目が集まるのかしらと心配しながらも、せっかくのお申し出ですのでお手伝いを引き受けました。応募団体の面接にも参加し、小さな生きものへの目を大切にして下さいとお願いをしながら。私の予想に反して、国内から51、海外から6団体の申し込みがあり(これまでで一番多いとのこと)、6月から7月にかけて1ヶ月間のフェスティバルが企画されました。

しかも、今回初めて実行委員出演の作品を出すことになり、私にも参加を求められたのです。仮題『宝船』。皆で宝船に乗って生命誌絵巻の中を「生きるとは何か」を求めて漕ぎ出すという作品です。振り付けはBRHで行った『根っこと翼』でダンスを披露して下さったケイ・タケイさんです。あれはいつだったか。私も一緒に踊らされて・・・。この中に記録があるかもしれません。

ところで、このコロナ騒ぎです。舞台などできるのだろうか。泣く泣く辞退したグループもあります。委員の間で丁々発止の議論の末、徹底的な安全配慮をして、『宝船』を舞台に載せることになりました。議論の中で、生命誌かるたに「ウイルスは 悪いやつだし 良いやつだ」とあるという話も出て、そこまで見てくれているんだと驚いたこともありました。

昨日(6月2日)練習しました。ダンスをたくさん覚えなければなりません。どうなることでしょう。「愛ずる」「紡ぐ」「巡る」「変わる」「生きる」「語る」などの動詞で踊るカマキリやチョウに合わせ、ちょっと古くなった「蟲めづる姫君」として語る役もあり……どうなることでしょう。委員は皆ベテラン、つまり、皆それなりの年齢ですから、ちょっとドタバタもします。でも久しぶりに体を動かして楽しかったです。

状況によりますが、スムーズに行けば6月28日(日)公演です。

※BRHで開催した『根っこと翼』の記録はこちらからご覧ください。

中村桂子 (名誉館長)

名誉館長よりご挨拶