Yoshihi K, Iida H, Teramoto M, Ishii Y, Kato K and Kondoh H
Epiblast cells gather onto the anterior mesendoderm and initiate brain development without the direct involvement of the node in avian embryos: Insights from broad-fieldlive imaging.
Frontiers in Cell and Developmental Biology 10:1019845
解説
エピブラストが前部中内胚葉上に集合することによって脳の発生が始まるが、その過程にはノードは直接には関与しない:ニワトリ胚広域ライブイメージングによる解明
胚発生における細胞の移動や相互作用をライブイメージングする方法が開発され、形態形成とパターン形成に関する基本的な原理が解き明かされつつある。古典的な実験発生学の方法ではそれらを明らかにすることができなかった。私たちは、ニワトリ胚の広い領域を分散的に緑色蛍光タンパク質で標識する遺伝学的な方法を開発した。この方法によって、脳形成の初期過程に起きる広範な細胞移動を研究できるようになった。細胞移動の軌跡の解析によって、胚の前半を覆う前部エピブラストの細胞全体が頭部の中心軸に向かって集まり、脳原基とそれに接した頭部外胚葉を形成することが明らかになった。赤色蛍光タンパク質で標識された、ステージ4の発生段階のノードを胚の前側の領域に移植すると、ステージ5の段階で、そのノードからAME(前部中内胚葉)組織が伸び出し、それらはさらに脊索前板と前部脊索に発生することがわかった。ステージ4のノード、あるいはステージ5のAMEを、通常では頭部外胚葉にしか発生しない前部エピブラスト領域に移植すると、移植組織由来のAMEに向かって近傍のエピブラスト細胞が集合した。この活性は、ノード自身には見られなかった。このようにして作られた前部エピブラストの集合体から2次的な脳組織が発生した。その2次的な脳は、集合したエピブラストがあらかじめ持っていた領域特性によって、「前脳―中脳」あるいは「中脳―後脳」という構成を持っていた。これらの結果から、前部エピブラストは、脳への発生と頭部外胚葉への発生という2つの発生能を持っていることが明らかになった。脳の発生能に関する新しい領域地図が描かれ、古典的なノード移植実験の結果が再解釈され、AMEの重要性が明確になった。重要な結論の一つは、古典的な見解とは異なり、ノードは脳の発生には直接には関与しないということである。