Yoshihi, K., Kato, K., Iida, H., Teramoto, M., Kawamura, A., Watanabe, Y., Nunome, M., Nakano, M., Matsuda, Y., Sato, Y., Mizuno, H., Iwasato, T., Ishii, Y., & Kondoh, H.
Live imaging of avian epiblast and anterior mesendoderm grafting reveals the complexity of cell dynamics during early brain development.
Development, 149(6), dev199999.
解説
私たちは、脳を中心とした胚の頭部がどのようにしてできるかを調べるために、ニワトリ胚のエピブラスト(体の組織のもと)を、万遍なくまばらに緑の蛍光タンパク質でマークする方法を開発して、孵卵20時間以降に起きる脳の大まかな構造が作られる時期の細胞の変化を追跡しました。孵卵後25~40時間の発生の時期に起きるプロセスです。添付図はマークされた(緑色に光る)細胞の軌跡を描いたものです。胚の前側の広い領域から胚の中心線に向かって、エピブラストの細胞が集まり、早く集まれた細胞が脳になり、遅れて集まってきた細胞が、脳を覆う表皮に発生することがわかりました。細胞が集まる部分のエピブラストはAME(将来、脊索前板と前部脊索になる)という組織に裏打ちさせています。このような解析と、遺伝子発現の解析から、胚の前半分のエピブラストは、孵卵20時間ではすでに、「脳か頭部外胚葉かいずれかに発生する」ように発生能が限定されていて、AMEにどこまで近く集まれるかで、脳と頭部外胚葉のいずれに発生するかが決まるらしいと推定しました。このことを確かめるために胚の前半分の端の方に赤に光るノードを移植すると、ノードそのものではなく、ノードから伸び出したAMEに緑の細胞が集まって第2の脳を作り、この場合でも遅れて集まった細胞が表皮になることがわかりました。AMEだけを移植しても全く同じことが起きるので、ノードは、AMEの供給源として働いているだけで、ノード自体には、以前に語られていたようなオーガナイザーとしての働きは全くないことも明らかになりました。