今号テーマ
生まれるまでの時間
今年の季刊「生命誌」は「生きものの時間」を考えます。
生きものの時間には、動物も植物も、太陽が光を与えてくれる昼と光を失う夜の繰り返しからなる「1日」という時間、昼の長さの変化や暖かさ・寒さを伴う「1年」という時間を基礎として刻まれるものが少なくありません。しかしそれらの時間は、固定されたペースで刻まれるのではなく、気候・気象など環境の変動などに対応して、早めたり遅めたりして、生きものがこの地球上でしたたかに生きるすべを与えています。この2つの基本的な、そして柔軟な生きものの時間は、生きものが親から子へ伝える情報として築き上げてきたゲノムの中に、生きものの歴史のかなり早い時期から刻み込まれています。
今号は、受精卵から体をつくるさまざまな細胞が生まれ、そのたくさんの細胞が絶妙なタイミングで互いに精巧につながり、一つの個体となる「生まれるまでの時間」に迫ります。体の組織や臓器が生まれる独自の時間の中で、細胞は体の他の部分の状況に応じて変化を早めたり、時には一時停止したりと、柔軟かつ驚異的な時の刻み方をします。私たち生きものが持つ時間について、記事や動画、紙工作を楽しみ、そして実感していただければと思います。
生まれるまでの時間
私たちがこの世界に生を受けるのは出産の時、誕生の瞬間ですが、生まれた時に私たちの身体は、2〜3兆個の細胞からできています。生まれたての赤ちゃんは小さいながらも、ヒトとしての完全な身体ができています。機能としては未熟でも、目も耳も、心臓も肺も、肩も膝も、精巧につくりあげられています。この身体は、どのようにつくられるのでしょうか。
生命誌マンダラについてはこちら
RESEARCH
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父由来のミトコンドリアゲノムが消されるしくみ
佐藤美由紀(群馬大学生体調節研究所)
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ボルボックスの仲間から多細胞化を探る
野崎久義(東京大学)
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粘菌のふるまいに見る自己組織化の始まり
澤井哲(東京大学)
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ライブイメージングで捉えたエンハンサーの転写制御
深谷雄志(東京大学)
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胚発生の比較から描き出す昆虫進化の全体像
町田龍一郎(筑波大学生命環境科学研究科)
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ニューロンを新天地へ送り出すサブプレート
丸山千秋(公益財団法人東京都医学総合研究所)
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背骨はどうやってできる?体節が作る分節構造
青山裕彦
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生きものを形づくるゲノム
JT生命誌研究館 表現を通して生きものを考えるセクター
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後ろ足の位置の多様性を生み出すしくみ
鈴木孝幸(名古屋大学)
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標本から発生、そして進化を知る
小薮大輔(東京大学総合研究博物館)
TALK / SPECIAL STORY
ニホンヤモリ
爬虫類は私たち哺乳類と同じ、胎児をつつむ羊膜をもち陸上で子供を育てる仲間です。
爬虫類のなかでもトカゲの仲間は、約7千種と陸上動物の中では最も種類が多い頼もしい隣人です。しかし、変温動物で冬は苦手なのか日本の在来種はわずかに約30種。身近なようで、なかなかお目にかかれないトカゲのなかまに紙工作で迫ります。
生命誌へのお誘い
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食草園が誘う
昆虫と植物のかけひきの妙JT生命誌研究館の活動をスクリーンで体験!
今年の夏より、東京・関西ほか全国の映画館で上映します。ぜひ、お近くの劇場へ足をお運びください。 -
みんなでつくる
生命誌かるた 第3弾お待たせしました!2次募集で寄せられた句のご報告と、さらなる3次募集のお知らせです。
みなさま、ぜひ、ご参加ください。