表現スタッフ日記
展示季刊「生命誌」を企画・制作する「表現を通して生きものを考えるセクター」のスタッフが、日頃に思うことや展示のメイキング裏話を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【自由研究】
2001年10月1日
夏の話。一通のe-メイルが届きました。家族で川遊びに行ったときに得体の知れない骨を拾った。子供の自由研究の題材にしようとホームページを検索して生命誌研究館にたどりついたので何の骨か教えて欲しい、というお父さんからです。パソコンで描いた骨の絵のデータも添付してあります。ほー、インターネットで自由研究ですか。“骨”とキーワードを打ち込んで、“骨ってどうやってできるの?ラボ”が引っかかったのでしょう。さっそく“骨ラボ”の青山研究員に相談すると、トリの首の骨のようだがもっと情報が必要だと言います。お父さんとのメイルでやりとりで骨の特徴を洗い出しますが、どうもよく分からない。ハクチョウの首?タヌキの尻尾?とこちらも次第にその骨が気になってきます。そして8月半ばのある日、大事そうに骨の包みを持って、お父さん、お母さん、小学生の男の子3人が生命誌研究館にやって来たのです。
実物の骨は真っ白で軽く、思っていたより小ぶりな印象。男の子がホームビデオをまわし、骨鑑定団が始まりました。専門書を調べ、ニワトリやサルの骨格標本と比べます。首の骨にしてはガッチリしている、この突起は肋骨の跡かもしれない、京都の山林という生態を加味すると…などなど夢中で推理していたのは青山研究員とsicpスタッフとご両親という大人(?)の面々でしたが、だんだん謎が解けてきます。
1. 骨の1つ1つが頸椎骨(首の骨)よりガッシリしている。
2. 竜の頭のような形をした端側の骨に小さな穴が2つあり、この穴が脊髄神経の通る管だから竜の頭は仙椎(骨盤の後壁)だ。
3. 竜の頭を仙椎とすると、尾-腰-胸-頭という哺乳類の骨格に当てはまる。
4. 骨のサイズから類推してネコのような小型の哺乳動物に違いない。


ネコじゃ平凡だからイタチにしよう!というのは私の勝手な意見で、結論はここまででした。
そうそう、夏休みの自由研究だったんです。パソコンやインターネットのせいで、見た目は綺麗で枚数は多いけど当の本人は何も考えていないレポートが増えているとのこと。とくに脳味噌を鍛えてない子供なら、自由な発想は楽しいはずなのに、情報という足かせに縛られるのは可愛そうだなあと思います。骨を拾って生命誌研究館にやってきた男の子は、後日お父さんから頂いた手紙にあったように、自分で考える体験をしたはず。そう、願います。
[桑子朋子]
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