世界的チェロ奏者であるヨーヨー・マが、二〇〇〇年に【音の文化遺産】を世界に発信するために立ち上げた「シルクロード・アンサンブル」。異文化がクロスするシルクロードにゆかりがあり、さまざまな歴史的、文化的、民族的、政治的背景を背負ったメンバーたちとともに、ヨーヨー・マは自分自身のアイデンティティを確立していく。
ヨーヨー・マが追求しているものは何か? パリでの幼少期からの貴重な映像、更なる音楽との出会いを求めて移り住んだニューヨークで親交を深めたジョン・ウィリアムズ、タン・ドゥン、ボビー・マクファーリンなどの証言から、ヨーヨー・マの素顔に触れ、チェロの名曲の演奏シーンや、世界中の音楽仲間たちとの熱いセッションの数々を贅沢に堪能できる。ステージでは見ることのできない音楽創造過程や、ケマンチェ、中国琵琶、尺八、バグパイプなどによる伝統的な東西の音楽と現代音楽とが融合し、国境を超えた究極の音楽、そして人間のハーモニーが紡がれ、観る者の心に響く。
[ 監督 ] モーガン・ネヴィル
[ 出演 ]
ヨーヨー・マ、ジョン・ウィリアムズ、タン・ドゥン、ケイハン・カルホール、梅崎康二郎、ボビー・マクファーリン、キナン・アズメ、ウー・マン、クリスティーナ・パト、ウー・タン
●10月13日のみの上映
二〇一七年六月、「科学のコンサートホール」をうたう生命誌研究館(高槻市)で、長岡京室内アンサンブル演奏会が催された。本作はその記録映像である。
音楽のように、誰もが楽しめるものとして科学を演奏する研究館(ホール)の礎を築き、一月に逝去した発生生物学者・岡田節人名誉館長への思いを込めた催しとして企画された。
演奏会の主題は、「生命誌マンダラ」。一つの細胞(受精卵)から発生が始まり、展開してゆく生命の世界を、音楽監督の森悠子が、選曲と構成、その演奏で見事に表現した。
曲目は、ビーバー「パッサカリア ト長調」のヴァイオリン・ソロ。モーツァルト「二つのヴァイオリンのための二重奏曲」。そして若手四人によるラヴェル「弦楽四重奏曲」。幕間のトークでは森と中村が音楽と生命誌の重なりを語り合う。
演奏家、一人一人の音色の調和から生み出される豊かな合奏に、協調する細胞から秩序が生まれる「いのちの不思議」が思われる。
[ 出演 ]
森 悠子、石上真由子、長瀬大観、野澤匠、中島紗理、中村桂子
●10月13日のみの上映
青木十良からは誰もが柔和な印象を受ける。だが、青木の心の内は、いつも不協和音が渦巻いているという。九歳で両親を亡くした青木の原点は悲しみ。中学生でチェロの音色の魅力にとりつかれ、生涯にわたりエレガンスを求め続けた彼の心のメッセージが、映像の端々から伝わってくる。
青木十良は八〇歳を過ぎて念願だったバッハの「無伴奏チェロ組曲」の録音に挑戦した。八五歳で「第六番」、九一歳で「第五番」、「第四番」は九四歳の時であった。
この映画は、九〇歳を越えてからの六年間を追っている。ねむの木学園園長・宮城まり子とは六〇年ぶり、ヴァイオリニスト・森悠子とは四〇年ぶりの再会と、森が音楽監督を務める長岡京室内アンサンブルとの初共演を果たす。音楽的にも技術的にも、難しいといわれる「無伴奏チェロ組曲」。一年間にも及んだ体調不良、それでも青木は屈することなく、一〇年の時をかけ録音を成し遂げる。
[ 監督 ] 藤原道夫
[ 出演 ] 青木十良、森 悠子、堀江牧生、宮城まり子
●10月12日のみの上映
自然の中で猫、かっこう、野ねずみなど生きものたちから「いのちの音」を学ぶ主人公ゴーシュの物語。小さな生きものたちから三八億年の生きものの歴史を考える生命誌研究者・中村桂子による新解釈と、チェコを拠点に国際的に活躍する人形劇師・沢則行の演出により幻想的な音楽劇として二〇一四年に初演。現代に生きる人々の乾いた心にみずみずしい感動を呼び覚ました。
[ 語り ] 中村桂子、村田英克
※二〇一四年八月公演(高槻現代劇場中ホール)記録映像です。
●10月13日のみの上映
生命誌を提唱する科学者・中村桂子の活動と哲学を追ったドキュメンタリー。生命誌研究館(高槻市)での生きもの研究と、その成果を伝える表現を通してさまざまな人々と交流し、生きていることを大切にする社会を訴えかける。大阪、東京、東北をめぐり、自然に眼を向けて、大切なことを忘れずに毎日を暮らす人々と語り合うと共に、東日本大震災の後、宮沢賢治を読み直し、決意した「生命誌版セロ弾きのゴーシュ」舞台化の本番までを追う。
[ 監督 ] 藤原道夫
[ 出演 ]
中村桂子、末盛千枝子、新宮晋、伊東豊雄、赤坂憲雄、関野吉晴ほか
●10月12日のみの上映