二〇一五年四月、約九〇〇〇人の犠牲者を出したネパール大地震。写真家・石川梵は震災直後、ジャーナリストとして初めて現地へ入り、ヒマラヤ奥地の震源地・ラプラック村にたどり着いた。壊滅した村で石川はひとりの少年と出会った。澄んだ瞳をした、一四歳のアシュバドル。彼の村を想う気持ちに石川もまた思いを寄せ、別れ際、二人はふたつの約束をした。
ひとつは、また村に戻ってくること。そしてもうひとつは、この孤立した村の惨状を世界に伝えることー。
貧しくても明るい家族、子どもたちの輝く眼差し、寄り添うように生きる村人たち、そして祈りー。
[ ナレーター ] 倍賞千恵子
[ 監督・撮影 ] 石川梵
[ 主な出演 ]
アシュバドル/プナム/ヤムクマリ/ほかラプラック村の人々
●10月28日のみの上映
いまは、もういない誰かへ、まだいない誰かのために。
岩手県陸前高田市。荒涼とした大地に、ぽつんとたたずむ一軒の種苗店「佐藤たね屋」。津波で自宅兼店舗を流された佐藤貞一さんは、その跡地に自力でプレハブを建て、営業を再開した。なにやらあやしげな手描きの看板に、瓦礫でつくった苗木のカート、山の落ち葉や鶏糞をまぜた苗床の土。水は、手掘りした井戸からポンプで汲みあげる。
いっぽうで佐藤さんは、みずからの体験を独習した英語で綴り、自費出版していた。タイトルは「The Seed of Hope in the Heart」。その一節を朗々と読みあげる佐藤さんの声は、まるで壮大なファンタジー映画の語り部のように響く。さらに中国語やスペイン語での執筆にも挑戦する姿は、ロビンソン・クルーソーのようにも、ドン・キホーテのようにもみえる。彼は、なぜ不自由な外国語で書き続けるのか? そこには何が書かれているのだろうか?
[ 主な出演 ]
佐藤貞一ほか。
●10月28日のみの上映
この惑星は、庭とみなすことができる― パリで行われた展覧会「惑星という庭」で 三〇万人を魅了したフランスの庭師ジル・ クレマン。彼は、パリのアンドレ・シトロエン公園やケ・ブランリー美術館の庭を手掛けたことで知られ、その仕事の陰にある彼の思想は、今、大きな注目を浴びている。
「動いている庭」。そこでは、草や木が、季節とともに移り変わる自然のダイナミズムの中から庭が構成されていく。
クレマンの自宅の庭に、その原型がある。クルーズ川に面した広大な庭は、本来その土地が持つさまざまな地形や植生を尊重しつつ彼が手を掛け、「谷の庭」や「野原」などと名付けた場所からなる。さらに、この地に自ら建てた家に太陽光発電を設置し、自宅の畑で採れた野菜で食事をする彼の生き方は、私たちに、自然と人間の関わりを深く考えさせてくれるだろう。
[ 主な出演 ]
ジル・クレマン/エマニュエル・マレス/山内朋樹ほか。
●10月27日のみの上映
中村桂子が旅をします。大阪、東京、そして東北へ そこで、自然に眼を向けて、大切なことを忘れずに暮らしている人々と語り合います。
DNAに魅せられ科学者になった。「生命誌」を提唱する中村の日常は、小さな生きものを見つめ、自然の中での新しい文明について考える人でもある。3・11の後、宮沢賢治を読み直した中村は「生命誌版セロ弾きのゴーシュ」舞台化に挑戦。リハーサルから本番へ、そして賢治の故郷への旅へと続く活動の中で、自然との関わりの中に「いのちの音」を見出す科学者の眼差しと賢治の生命観が重なる…。
[ 主な出演 ]
中村桂子/末盛千枝子/新宮晋/伊東豊雄/赤坂憲雄/関野吉晴ほか。
●10月27日・28日両日上映