今号テーマ
心も細胞も地面もゆらぐ中で
静謐だからこそ心を揺さぶられてきた内藤さんの作品が、東日本大震災後小さな白い《ひと》として現れ、これまで以上に惹きつけられました。光の中での語り合いは幸せな時でした。リサーチは細胞のはたらき。柔軟な免疫細胞と壁をもつ植物細胞というまったく異質の細胞が、関わり合いの中で個体を支える動きを見ることで、細胞のはたらきの実態を追います。サイエンティスト・ライブラリーも免疫。坂口先生の発見された制御性T細胞は、まさに生きものの揺らぎを見せてくれます。研究評価が揺らぐ過程も興味深いところです。紙工作のゲノム展はこれで半分でき上ります。これからの展開を想像しながらお楽しみください。九州での地震が続く中での発刊です。生命誌に何ができるか考え続けます。
TALK
地上の光と生きものと
CARD
ゆらぐ
今年の動詞は「ゆらぐ」です。生る、関わる、続くなど生きもののありようを示す動詞を考えてきた中で、常に頭の片隅にあった言葉です。一見マイナスに見えますが、実は、生きものが長い間続いてきたのは、「ゆらぐ」という現象があったからです。DNA→RNA→タンパク質という基本的な情報の流れにさえ、ゆらぎがあります。すべてが決まりきっていたら、進化もなくどこかで滅びていたでしょう。ゆらぎが生み出す生きものらしさに眼を向け、それを生かした柔らかさをもつ社会につなぎたいと思います。大地も時にゆらぐことで続いてきていることを忘れずに、生き方を考えなければなりません。