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FROM BRH 20周年の報告とこれからの展望

生きもの愛づる人びとの物語り 1

研究と表現の両輪による活動を続けて20年、明確なまとまりが見えてきました。これをどのように生かし、どう展開するか。次の10年に向けて考えています。よい提案がありましたら是非。

1.研究セクター カエルとイモリのかたち作りを探るラボ

これまでの10年

私たちは、脊椎動物の形づくりに注目して研究を行なってきた。脊椎動物の形づくりとひとことで言っても何に焦点を当てるかによって様々な切り口があるが、私たちは、両生類を用いてふたつの点から攻めることにした。ひとつは原腸形成過程で、もうひとつは頭部形成過程である。

原腸形成は、脊椎動物の基本体制を確立するために重要な発生過程であり、そのかたちも大きさも互いに異なる脊椎動物種が、原腸形成過程を経ることで種を越えて良く似た形態をとることから、脊椎動物の形づくりにはきわめて重要な初期発生過程であると言える。また、無脊椎動物、たとえば脊椎動物に最も近い原索動物とその発生過程がどのように異なるのかについて考えた場合に、系統発生学的に「新しい頭部」と呼ばれる、脊椎動物独自の頭部構造の存在が重要であろうと言われる。この「新しい頭部」は主に神経堤細胞によって形づくられることから、進化の過程で神経堤がいかに獲得されたかを知ることが、脊椎動物がいかに出現したかに答えるひとつの方法であるともいえるだろう。

2014年3月1日に開催されたBRH20周年を記念する催し「生命展」の様子

専門、非専門の枠を越え多くの方と館員が語り合う場となった。

この10年をかけて私たちは脊椎動物の原腸形成運動の基本的な動きについて解析を進めてきた。また、神経堤が個体発生の過程でどのように形成される(出現する)のかについても、これまでにいわれてきたモデルとは一線を画する新しい可能性を提案した。これらにふたつの内容について、二枚のポスターにまとめた。

カエルとイモリのかたち作りを探るラボのポスターを見る 01(PDF)

カエルとイモリのかたち作りを探るラボのポスターを見る 02(PDF)

20周年BRHシンポジウムシリーズ第1回
「かたちまつり3〜脊椎動物の原腸形成運動は似ているのか?」ご報告

私たちは、両生類の原腸形成過程を説明する新しいモデルを提出している。前世紀初頭から提唱されているモデルからでは、両生類を越えた脊椎動物の原腸形成過程を統一的に説明するモデルの確立は困難だったが、我々が提唱している新しいモデルによって、脊椎動物に共通する原腸形成運動を議論できる足がかりができたと考えている。このたびのシンポジウムでは、原索動物であるホヤの研究者をはじめとして、脊椎動物の魚・鳥類・哺乳類の研究者を招いて、「脊椎動物原腸形成運動の本態」についての議論を深め、統一モデルの端緒が見えてきたように感じる。また、「共通であるとするなら組織や細胞はこのように動いているはずだ」というような作業仮説をおくことで新たな可能性の提示にもいたったと感じている。現在は、このときにそれぞれが直感的に得ることとなった「なにか」を具体的な「絵」として描き出す試みを行なっている。たたき台ができたらあらためて同様なシンポジウムを企画するのも意義深いだろうし、この思考・思索の繰り返しによる新たなアイデアの創出を生命誌研究館から発信できることに大きな意味を感じている。

 

私の新しい科学とこれから

新しいモデルの構築やシンポジウムなどでの議論を踏まえて、脊椎動物の発生過程を知る上で、単なる遺伝子発現ネットワークの制御を越えた新しいルールの存在があったのではないかと考えるにいたっている。現時点ではたとえば、卵黄の蓄積による卵の巨大化の問題と細胞分裂回数(あるいは原腸胚での細胞数)の問題などが、後の形態形成運動に大きく影響しているのではないかと考えて思考を始めている。また、「ゲノム」の概念を思索により構築していくことは今後の生物学、特に個体発生と系統発生にとって重要であろう。これには言語学的側面や哲学・数学など多岐に渡る思考の融合が必要ではないかと考え、生命誌研究館という「地の利」を生かして、なにかできないか?あるいは何ができるのか?についてゆっくりと考えを進めてみたい。


20周年BRHシンポジウムシリーズについて→
カエルとイモリのかたり作りを探るラボについて→

2. 表現を通して生きものを考えるセクター

今回はBRH20周年を記念する催しに向けて取り組んだ成果をまとめて報告します。この作業で生命誌のこれまでと今が明確に見えてきました。これをもとにこれからを考えます。新しい表現をご覧になり、感想・意見・提案をお願いします。

映像で綴る生命誌研究館のこれまでと今、そしてこれから
ドキュメンタリー 「自然を知る新たな知を求めて」

20年を振り返りながら研究館の日常をドキュメンタリーで表現しました。生命誌研究館は「生命誌絵巻」と「オサムシのDNAが思いがけず日本列島形成を語った研究」から始まり、クモ、カエル、コバチ、チョウなど身近な生きものから発生、進化、生態系を探る研究へと展開してきました。この映像から「自然を知り、その中で生きているという感覚を持つことの大切さ」を共に感じていただければ嬉しく思います。


 


動画 「生命誌三つの表現 ─ゲノムが貫く時間と階層─」

10年ごとに創った3つの表現(生命誌絵巻、新・生命誌絵巻、生命誌マンダラ)を動画にしました。細胞内のゲノムが普遍、多様、全体、歴史など生きものの基本を示す切り口であることがわかります。ゲノムが貫く生きものの物語りと階層性を考えることがこれからの課題です。こちらでもご覧いただけます。
 

1F 展示ホール「ゲノムが語る生命誌」展

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展示 「季刊生命誌アーカイブ」

季刊「生命誌」20年分の記事をパネル化し、実物を置きました。サイエンティスト・ライブラリー77人の研究者の集合は圧巻です。トーク、研究の多様性も魅力です。すべて、今後の発信の原点にします。
 

1F展示ホール奥

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表現を通して生きものを考えるセクターについて→

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レクチャー

2025/1/18(土)

『肉食動物の時間』