今号テーマ
考えをめぐらせながら
「めぐる」というテーマでの1年間がめぐりました。トークは、以前から関心のあった言語研究を脳科学として進めている酒井さんの話をたっぷり伺いました。fMRIで本当に意味のある画像を出すには、ていねいな実験計画が必要です。文法処理領域を見つけた計画は、言われてみればあたりまえ、でもその通りでした。リサーチは、食うー食われる関係が示す周期から進化を現場で捉え、生態系とつなげる新しい視点です。自然を全体として捉える一つの切り口になるでしょう。クロスは、種の維持と分化というこれまた自然そのものを知る大事な切り口を植物のDNA分析から追う研究です。ガラパゴスでなくとも、海と島は種の分化を考えるうえで重要であり、そこに着目しました。BRHでのイチジクとコバチの共生研究の新しい側面であり、生態学との共同はこれから更に進めたいと考えています。サイエンティスト・ライブラリーは糖鎖生物学の流れを作った谷口先生。生体物質として核酸・タンパク質と並んで重要とわかっていながら研究が少なかった糖研究をγ-GTPという今ではなじみの酵素を切り口に進め、基礎医学と医療を結びつけたのです。(中村桂子)
TALK
文法が生み出す人間らしさ
研究を通して
BRHをめぐる研究
CARD
めぐる
愛づる、語る、観る、関わる、生る、続く…と続けてきた動詞で考える。今年は「めぐる」です。回る、廻る、巡る。地球全体で水や炭素などの物質がめぐる、体内を血液がめぐる、季節がめぐる…自然界はさまざまなところでの「めぐる」から成っています。有限な地球で、生きものたちが38億年続いてきたのも、一つの生命体が滅び、また新しい生命体が生まれるというように「めぐる」をくり返してきたからです。さまざまな研究室をめぐって興味深い研究を探し出すのも楽しみです。