今号テーマ
かたちが生まれる
●「創る」も「生る」になる
「生る」。自然を思わせます。その対極にあるのが「創る」。人工です。都市はまさに創るで満ちています。ところが建築に「生成する」という考えとその具体化方策を持ち込み、ふしぎで楽しい空間を生み出しているのがトークの伊東豊雄さん。生きものの巣のような洞窟のような。建築自体が生命体のように自分で動いて行きそうな感じがします。リサーチは、生きものの形によく見られる樹状パターンに注目し、パターン生成のモデルを提案。形つくりは重要なテーマであり、モデルから基本ルールを探すのは興味深い方法です。もう一つは、大腸菌という分子生物学のモデル生物を用いて、分子のはたらきから行動が生まれる過程を詳細に追う研究。人間も含めた生きものの行動の由来を単細胞で考えるのは一つの方法でしょう。形や行動の背後にあるきまりが知りたいものです。サイエンティストライブラリーの柳田充弘さんは、芸術家になっていたかもしれないという感性を生かしての研究。勘と好みを生かした物語りつくりという考え方は、生命誌と重なっています。BRHからの発信も、「生命誌の種」というラボとSICPの共同企画や朗読ミュージカル「いのち愛づる姫」の京都公演のお知らせなど盛りだくさんです。
TALK
生きものが暮らす空間が生まれる
研究を通して
CARD
生る
「生る」はすべての始まりです。“なる”と読み、成る、為るなどともつながります。『自己創出する生命』という書物から始まった生命誌の原点でもあり、愛づる、語る、観る、関わるより更に生きもの、そして自然そのものに近い言葉です。木の実が生るという時、あるべきものが自ずと生じてくるという感じがします。柿の木に柿の実が生り、ぶどうの木にぶどうが生る。その陰にはそれを生じさせる生命現象があります。