詳細
日時
2024/09/28(土) 13:10 - 16:30
場所
JT生命誌研究館・およびYouTubeライブ配信
出演者
(発表者順)
小田広樹(JT生命誌研究館)
伊原さよ子(東京大学)
田上俊輔(理化学研究所)
主催
JT生命誌研究館
参加方法
参加無料 ※本シンポジウム講演は専門性の高い内容です。
【現地開催】JT生命誌研究館までお越しください。予約不要です。
【ライブ配信】当日このページでライブ配信を行います。
※場内を撮影いたしますので、ご了承ください。
内容
企画趣旨
生きものの世界は多様性に富んでいます。外見だけでなく、体や組織を形成する過程、内部の構造や機能、さらには個体や集団の生存や繁殖に関わる行動や機能に至るまで、様々な特徴が見られます。この生きものの多様性はどこから生じるのでしょうか?その一因は遺伝情報(ゲノム)の進化や多様化にあると考えられます。しかし、ゲノムにコードされるタンパク質の変化を通じて、生きものに多様性がもたらされるメカニズムに関する私たちの理解はまだ不十分です。それでも、先進的な研究は、遺伝学とタンパク質の構造-機能の解析を大きな駆動力として、この問題への洞察を高めています。本シンポジウムでは、タンパク質の構造-機能の理解を通じて見える、生きものの多様性の源泉について第一線でご活躍の研究者にお話しいただきます。シンポジウムでは、ゲノム解読時代から一歩、二歩進んで、タンパク質の構造・機能及びその進化の研究が生命の進化・多様化の理解に果たす役割が見渡せると嬉しく思います。
開催ポスターはこちら
プログラム
13:10 | 開会のあいさつ |
13:20 | 「細胞をつなぐ構造と仕組みが生む多様性」 小田広樹 |
13:50 | 「味・匂いを感知する化学感覚受容体の多様性」 伊原さよ子 |
14:30 | 休憩 |
14:40 | 「生命誕生・初期進化過程の再現:40億年前のタンパク質進化」 田上俊輔 |
15:20 | 談話会 |
16:00 | 閉会の言葉 |
講演概要
「多細胞動物の根幹をなす細胞間結合構造の多様化とその意味」
小田広樹(JT生命誌研究館・大阪大学大学院理学研究科)
多細胞動物の体はたくさんの細胞がつながって形作られる。祖先のどこか深くで、細胞と細胞を接着する分子機能が誕生し、その機能を実現する遺伝子が、その後の多細胞動物に引き継がれてきたことが考えられる。しかし、現在の多細胞動物において、細胞間の接着を実現している分子構造の仕組みはひとつではない。接着を実現する分子構造は大胆に、そして多様に、進化しうることが分かってきている。私たちが取り組む研究の問いは、原始の接着はどのような分子構造で実現したのか、接着という分子機能を確保したまま、分子構造はどのように変われたのか、そして、変化した分子構造が新たな分子機能や効率を高める仕組みをもたらさなかったのか、である。カドヘリンと呼ばれる分子の研究を基に、多細胞動物の最初の誕生から現在の多様化までの過程において、細胞間の接着面で起こった分子のドラマを考えてみたい。
「味・匂いを感知する化学感覚受容体の多様性」
伊原さよ子(東京大学大学院農学生命科学研究科)
多くの生きものは、味、匂い、といった化学物質をたよりに、周囲の餌、交尾相手、天敵などの存在を感知し、生命活動の維持、種の存続に不可欠な情報を得る。この時に化学物質を感知するセンサータンパク質が「化学感覚受容体」であり、近年のゲノム解析の結果、その遺伝子の数や種類は生物種によって実に多様であることがわかってきた。一方、これらの遺伝子がコードする個々の受容体タンパク質の構造や機能について、詳細が明らかにされている例はまだ少ない。本講演では、私たちが最近取り組んできた、糖を認識する昆虫の味覚受容体、果物の香り成分を認識する霊長類の匂い受容体の研究を紹介し、生物種間および個体間でみられる受容体タンパク質機能の多様性とその意義について考察する。
「生命誕生・初期進化過程の再現:40億年前のタンパク質進化」
田上俊輔(理化学研究所生命機能科学研究センター)
我々の生体反応のほとんどを実現しているのは多様かつ複雑な構造を持つタンパク質です。現在地球上に存在するごくごく単純な微生物でも数百種類のタンパク質を必要としますが、約40億年前に存在した全生命の共通祖先も同数程度のタンパク質を持っていたと推測されています。したがって、生命進化の非常に早い段階でタンパク質の爆発的な多様化・複雑化が起きていたと考えられます.我々はそのような生命誕生・初期進化過程を理解するために、太古の祖先型タンパク質を再現する実験を進めています。これまでに,非常に単純化された祖先型タンパク質(7種類のアミノ酸のみを含む)の作成に成功し、またそれがわずかな変異によって異なる形のタンパク質に進化することも実証しました。ほとんど奇跡にも思える生命の誕生過程も、このようにごく簡単な過程の繰り返しによって実現されたのかも知れません。
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