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植物の香りは誰を誘う?ー植物が結ぶ植食者と寄生バチの関係ー 講師:塩尻かおり(龍谷大学農学部准教授)

詳細

日時

2021/12/18(土) 14:00〜15:30

場所

【現地開催】 JT生命誌研究館 1Fホール奥
【ライブ配信】 JT生命誌研究館 ホームページ

出演者

塩尻かおり(龍谷大学農学部准教授)

主催

JT生命誌研究館

参加方法

参加無料・申込み不要
【現地開催】 定員50名
【ライブ配信】 当日このページでライブ配信を行います。
※感染拡大の状況により変更になる場合があります。
※場内を撮影いたしますので、ご了承ください。 

内容

龍谷大学の塩尻かおり先生をお招きして、植物の香りの役割についての講演を行います。植物の香りといえば、チョウやハチを誘う花の香りが思い浮かびますが、葉っぱから出る匂いにも意外な役割があるのです。葉っぱを食べようとする植食者、匂いで身を守ろうとする植物、植食者に寄生する寄生バチの3者が絡み合う複雑な関係についてお話しします。終了後には館内の展示をめぐり、植物とチョウのための屋上庭園「Ω食草園」をご案内するツアーを行いますのでぜひご参加を。身近な生きものの世界を知り、問いを見つけてみましょう。

●当日のスケジュール
 14:00〜15:30 講演(塩尻かおり:龍谷大学農学部准教授)
 15:30〜16:30 展示とΩ食草園ツアー(ライブ配信は行いません)


講演の終了後には館内ツアーを行います。館内には植物と昆虫を結ぶ匂いの役割を紹介した企画展示コーナーがあります。

開催記録

 

レクチャー記録動画


 
 

質問シートへのお返事(塩尻先生より)

 

Q1. 卵寄生蜂の誘引物質は何でしょう。

A1. 卵を植物に産んだとき、その卵が落っこちないように接着剤のようなものを植物につけたり、植物に少し傷をつけて埋め込んだりします。そのような化学的な刺激、物理的な刺激を植物が感知し、匂いを放出することが知られています。(JT生命誌研究館の展示に詳しい説明がありました)
 

Q2.  シナモンとレモンとバニラを混ぜると味もコーラになる?

A2. 味っていうと、舌で感じていると思われますが、実は鼻で感じる匂いがとても重要です。風邪をひいて鼻がきかないとき、カレーライスを食べても、辛いだけで味がしなかったという経験はありませんか? 口の中で揮発性物質(匂い)が鼻の方に行って匂いを受容することで、味のように感じることができます。 みなさんが飲んでいるコーラも実は甘い炭酸水であって、コーラの味っていっているのは、匂いなんです。だから、シナモンとレモンとバニラをうまい具合に混ぜたものを、甘い炭酸水にいれると、コーラを飲んでいるように感じると思います。 ただ、面白いことに視覚も重要で、あの焦げ茶色もコーラのイメージには重要のようです。ちょっと昔に透明コーラが売られていましたが、すぐになくなりました。
 

Q3. モンシロチョウの幼虫はアオムシサムライコマユバチに食べられないように進化していないのですか?

A3. そう思いますよね。アオムシサムライコマユバチに食べられないように進化したモンシロチョウが増えると、それに抵抗をもつアオムシサムライコマユバチが出てきます。まさに軍拡競争です。そのようにどんどんお互い進化をくりかえしていっている結果、アオムシサムライコマユバチは、モンシロチョウ幼虫にしか寄生できなくなっているんです。
 

Q4. 誘導反応を示す植物はやはり80mの範囲になるか(キャベツの匂いは80メートル離れた寄生蜂を誘引するというお話から)

A4. 植物種によりけりだと思っています。
今、わかっている範囲だと、セージブラシでは60㎝程度、ブナ・カエデだと10m程度です。また、コナガサムライコマユバチは80m先のキャベツにも誘引されましたが、これも虫の種によるとおもわれます。
 

Q5. ニンニクなどの臭いも防御臭でしょうか?

A5. そうだと思います。今回は虫に注目して話をしましたが、植物にとって天敵は虫だけでなく、草食哺乳類や病気(細菌やカビ、ウイルス)があります。もしかしたら、一般の草食哺乳類はニンニクの匂いは嫌いなのかもしれません。抗菌効果もあると聞いたことがあります。
 

Q6. アオムシサムライコマユバチやコナガサムライコマユバチなど、なぜ名前の中にサムライがあるのですか?日本で発見されたからですか?

A6. なるほど。私が大学院生のころは、まだ、「アオムシコマユバチ」、「コナガコマユバチ」と呼んでいました。途中で、サムライが付け加わりました。なんでも、分類が少し変わったという話でした。
それぞれの蜂の起源はわかりませんが、アオムシサムライコマユバチは、モンシロチョウやオオモンシロチョウに寄生するスペシャリストです。モンシロチョウなどの起源がヨーロッパなので、そのあたりだと思います。
コナガは暖かい地域出身、たしか東南アジアだったとおもいますので、コナガサムライコマユバチも起源は日本ではないとおもいます。
学名はそれぞれ、Cotesia glomerata, Cotesia vestalis です。
ハチの分類については、以下にわかりやすく紹介しています。(ハチの仲間は今は「ハチ目」というグループ名で呼ばれていますが、下のページでは「膜翅目」になっています。)
https://www.hitohaku.jp/insect-museum/guide/sec-1.html

いただいたご質問を編集部で厳選し、先生にご回答いただきました。たくさんのご質問をありがとうございました。



レクチャーについて

JT生命誌研究館の研究員をはじめとするさまざまな分野の研究者が、探究と発見の日々をお話します。
進行形の研究、そこで考えたこと、苦労話など研究を身近に感じる絶好の場です。
レクチャーを聞いた後には、会場も一体となって話の輪が広がります。入場無料です。