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ダンスイベント 「根っこと翼」

詳細

日時

2003/07/26(土)

主催

生命誌研究館

内容

「根っこと翼」
・プログラム・
第一部 :ワークショップ ダンスと生命誌の融合
1 石の踊り
2 松ぼっくりの踊り
3 生命樹に学ぶ
4 大根の踊り ケイ・タケイ 中村桂子

第二部 :朗読「根っこと翼」中村桂子
     ダンス「根という名の鳥」 ケイ・タケイ
音 楽 佐藤聡明 衣 装 ケイ・タケイ
演 出 上田美佐子 照 明 中村藍子 照明協力 0GG
音 響 上原大地 主 催 JT生命誌研究館

 

開催記録

 

ダンスイベント「根っこと翼」

7月26日(土)午後5時、生命誌とダンスを融合させたイベントを行いました。
この企画のもとになったのは、中村桂子館長の「根っこと翼」という詩です。これは、大地に根をはった植物と、翼をもって飛んでいく鳥の関係を中心に、生きもののつながりを描いたものです。  

第1部は、根っこという言葉から連想されるダンス、また、生きもののつながりについての生物学的な話などをおりまぜながらのワークショップ。観客も参加して、生命誌とダンスの融合を試みました。  

第2部では、中村館長の「根っこと翼」の詩の朗読とケイさんの「根という名の鳥」という創作ダンス。

生命誌がダンスと一緒になって行った科学の新しい表現でしたが、中村館長自らがダンスに挑戦する場面もあり、来館者も面白いという感想をもった人が多かったようです。

高校のクラス会でお隣に座った本多玉枝さん。高校時代は小野田トミ子さんだったのでオンちゃんの方が通りがよい。東京芸大出身の画家です。見せて下さった近作の中に、“根っこと翼”にピッタリの一枚を発見してびっくりしました。ケンブリッジの古いれんが塀に小鳥のような形をみつけ、長い間閉じ込められていた鳥を解き放ってあげようと思って描いたのだそうです。どこへ向かって行くのか、うれしそうですね。オンちゃんの厚意でプログラムの表紙になりました。(中村桂子)


詩「根っこと翼」中村桂子 を読む
 

当日プログラムより

▶︎根っこと翼  中村桂子

地球上には5000万種とも言われるさまざまな生きものがそれぞれの能力を生かして暮らしています。桜は地面にしっかりと根を張って。ヒヨドリは青い空を自由にはばたいて。まったく違うこの二つの生き方はどちらもみごとです。しかも植物も鳥も共通の祖先から生まれた仲間。お互いに関係をもって生きている。

もちろん私たち人間もこの中にいます。この仲間の一つとして私たち人間はみごとに生きているだろうか。そう考えた時、私たちは根も翼も持てるはずなのに、なんとなく時流に流され、夢を失った姿で暮らしているのではないかと気に成り始めました。根をどこに求め、翼でどこに飛んでいくのか。生命誌を通して、生命・人間・自然を見つめることで根っこと翼を探したいのです。



▶︎ケイ・タケイさんは・・・
踊りを創り、身体で表現するために生まれてきた妖精のような人。桧健次、アン ハルプトン、アンナ ソロコフ、マーサ グラハムなどなど専門外の人でも知っているたくさんの著名なダンサーを恩師と呼び、それらの人から認められているが、そのいずれとも違うケイ・タケイがある。

子どもの頃、土や石や植物に自然・宇宙を感じた気持ちをそのまま持ち続け、素直にしかし強力な主張を持って生きている。貧しくとも情熱を持つ人たちと共にいるのが好きという。今年はこれから東京、京都、インド、ニューヨークでの公演が待っている。生命誌のよき理解者、表現者。ケイさんの動きによって生命誌って何なのかを体でわかっていただけることを期待しています。



▶︎頭も体もーお稽古場で
生きものの基本は何たって形、体です。他の生きものたちは、言葉がない分、体の表現が上手です。人間も、もっと体を使った方が本質が見えるはず。そんな面倒なことを言わなくとも体を動かすと気分がいいし、うまくいけば気になる肉も・・・。

練習の間が一月くらいあくと、“ケイ子先生わかってますね。” “もちろん。” “ナニソレ。全然違うじゃない”。頭でわかるのと体がその気になるのとは違います。でも頭でわかった時、体の方もそうなんだとうなずくことがある。体が動くと頭がストンとわかることがある。この関係が面白いのです。この感覚を皆さんと共有できたらと思って始めた試みですが、正直大変なこと始めちゃったと思っています。どうなることでしょう。


▶︎稽古の日々に ケイ・タケイ
2月の中ごろ、中村桂子先生が打ち合わせにいらした。息子から「えらい先生だから言葉をていねいに」と言われていた。中学の国語の本に中村先生の「38億年の生命」という文があったからだ。しかし桂子先生はあまりにも自然にふわっと軽い風を背負って現れた。もちろん私は言葉使いのことをまったく忘れ、その心地よい風の中に包まれていった。それは稽古中も続き、汗みどろにはならず、何回も稽古日をとってゆったり進んでゆく。稽古場では笑い合い、時に足を踏まれ、なんとなく時間が過ぎる。だが、事は着実に進んでいた。これが桂子先生の言う「自己創出」なのだろうか。創ろう、創ろうと力まなくても、自然に生まれてくる。それが大切だという。上田美佐子さんも自然の風を伴ってふわっと稽古場に来て短く的確なディレクションを下さる。一筋の光りのようにあるべき事が見えてくる。いつまでも続いて欲しい稽古の時間だった。


▶︎根という名の島
「植物の地上の細胞はお日さまに向かってのびる、根の細胞には、お日さまから遠くへ、遠くへと進む性質があります」始まりは桂子先生のこの言葉だ。  光と闇の両極へのびるもの、それは多くのイメージとインスピレーションを私に送ってくれた。しかし、イメージを直接、動きに結びつけるのは危険だ。説明的になるから。そこからずーっと離れた所、ずーっと違う所に動きがあるのだと思い、長い間稽古場に座りつづけた。3分位の動きが発見できる。しかし、これは違うとつぶやく。次の日もまた、やっと5分くらいできる。だが、うそだと叫ぶ。そんな日々をくり返した。今、何かどこか私の中で、これでよいと感じるものを見つけた。それが今回の「根という名の鳥」になった。舞い通したい。音は私がもっとも信頼している作曲家の佐藤聡明さんの曲だ。


▶︎期待  上田美佐子  
科学者には詩人が多く、夢みがち、芸術家の中でもダンサーは現実主義。その特徴が極端なほどコラボレーションがおもしろく、対立にまで高まる瞬間は賭博の興奮にも似る。  

ご両人の「根と翼」についての思想、イメージも微妙から大幅なる挑戦にいたろう。長く深い学識と五感どころか10をも20をも鍛えもつ感覚との暗闘、まさぐり、そして発見の後のハーモニーやアンサンブル。  期待しているのは私ばかりではない。この「ケイとケイコ」のパーフォーマンスを観るために、わざわざチェコから世界的な人形演劇の狂気のマエストロ、ペトル・マターセクも駆けつける。 (東京・シアターχ劇場プロデューサー)