サマースクール 2017年度の報告

チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ
「チョウが植物を見分ける仕組みを遺伝子から考えよう」

今年度の参加者は5人で、そのうち4人が高校生と若い構成でした。二日間で取り組んだ実験のテーマは、産卵行動と関連する遺伝子が、体のどこで働いているか確認し、その機能について考察するという内容でした。

アゲハチョウ成虫の餌は花の蜜なので、植物の葉を食べることはないのですが、植物に含まれている化合物を味として認識することで幼虫が食べられる種類であることを確認して産卵します。この味見に関わる遺伝子は、蝶と食草がどのように関わり合いながら生きているのかを理解するため重要なヒントをくれる、当研究室にとってとても大切なものです。

アゲハチョウの組織を液体窒素中で粉砕しRNAを精製、逆転写反応でDNAに変換してPCRで増幅を確認するという作業を行いました。特に1日目は作業の手順が多く、目に見えないものを扱うため、不安を抱えながらめまぐるしく時間が過ぎていったのではないかと思います。

サマースクールでは、実験の合間に研究に関する勉強をしていただきましたが、大学の講義として考えてもやや高度な内容であったにもかかわらず、皆さんがしっかり理解していたことに驚きました。サマースクールの最後に行う活動発表会に向けて、資料作成を行なっている際、参加者の皆さんで交わされた議論は興味深いものになりました。各自が二日間で学んだことから意見を出し合い、より理解を深めることができたのではないでしょうか。おそらく、用意された実験を体験しただけではなく、「研究の現場」がどのようなものなのかを経験していただけたのではないかと思います。

サマークスールは忙しい二日間になったと思いますが、知的好奇心が強く刺激されたのではないかと期待しています。実験を行い、結果を確認し、内容について考察し、意見を出し合って議論したという経験が、何かのお役に立つことを願っています。

尾崎克久(研究員)

参加者の感想

実験をすることは自分の発見を確実なものであるとする証拠

参加者:Y.I.

昆虫が好きで、サマースクールのテーマに興味を持ち私は今回チョウが食草を見分けるしくみを探るラボに参加させていただきました。普段は見ることのできない研究室や飼育されている可愛い生物たちを見ることができました。

実験をするにあたって、研究ノートの作り方を教えてもらい、高校で使わない実験用具も使いました。これから大学で理系の学部に進学していこうと考えている私はこのようなことを将来できたら楽しそうだと思いました。

実験は生きているチョウの体の各部位からRNAを抽出してDNAにしていくといったもので部位ごとに一人が担当しました。ほとんどが細かい作業であり、結果は最後までわからなかったので自分の所にミスがあったらとドキドキしながら作業をしていました。

報告会を通して実験をすることは自分の発見を確実なものであるとする証拠であり、正確で客観的なものであることが必要なのだと感じました。

最後になりましたが、このサマースクールを準備し、私でもわかるように指導してくださったスタッフの皆様、一緒に実験したスクール生の皆様、実験をするにあたって命を頂いたアゲハチョウの3個体。楽しく、ためになる2日間をありがとうございました。

進化は、成長高等化ではなく、変化

参加者:Y.M.

アゲハチョウのメスは、産卵する前に幼虫が食べるかどうか前脚で叩いて見分けること、交尾後、精子を貯蔵して1つずつ受精させて産卵することを知りました。

私は、実験動物のラットを交配させて育て、実験に使用していたので、ラット(哺乳類)と比較して、昆虫の合理的な生き残り戦略とその寿命について考えるようになりました。

進化は、成長、高等化ではなく、変化であることをこのサマースクールで学びました。昆虫類と哺乳類の繁殖行動を比較しているときに私は、哺乳類の方が昆虫類より高等な生物と当たり前のように思っていることに気がつきました。

DNAについて学びなおすために参加させて戴きましたが、生物について広く、深く学べて充実した2日間を過ごすことが出来て感謝しています。

色んな体験をして考える夏

参加者:K.N.

DNAを扱う実験を初めてして、とてつもなく疲れました。あの作業は集中力、器用さが必須だと感じます。それを仕事としている研究者の方々は本当にすごい人で尊敬します!
 教えて頂いた蝶の仕組みは知らないことばかりで興味を持つようになりました。それから、家のミカンの木の周りをよく飛んでいるアゲハチョウを観察するようになりました。ドラミングしている姿を見て本当にやってる!と、発見して、自分の目で生命を繋ぐための行動を見れたことに少し嬉しくなりました。

生命誌という言葉について自分なりに解釈して、私たちヒトはこれから生物のために何が出来るか考えてみました。その結論は環境問題と異文化間の問題を解決すべきだと思いました。そのためには、自分の行動がもたらす影響を考えるための「想像する」力、周りの生物もちろん人についても詳しく「学ぶ」力、様々な国や性格の人とコミュニケーションをとるための「話す」力、相手の国の文化を「理解する」力、が私たちヒトには大切だと思いました。

今年の夏は色んな体験をして、考える夏になりました。そのきっかけを提供して下さりありがとうございました!

貴“蝶”な体験

参加者:C.M.

今回のサマースクールでは、チョウが食草を見分けるしくみを探るラボに参加させていただきました。本格的な研究に触れ、体験するのは初めてだったので、参加前は多少身構えてしまいましたが、和やかな雰囲気の中、初心者の僕にもわかるよう丁寧に実験を指導して下さり、本当に充実した2日間を過ごす事ができました。

最先端の研究をされている先生方から聞くお話は学校では教わらない事ばかりで、とても興味深く、その奥深さに引き込まれました。

蝶に秘められた生命の不思議に感動しつつ、今回の貴重な体験を糧にして、これからの自分の「考える」視点につなげ、生かしていきたいと思います。

指導して下さった先生方、館内の皆様には大変お世話になりました。どうもありがとうございました。

なんて生物はすごいんだろう

参加者:T.K.

なぜ遺伝子という完璧なシステムがあるのに、蝶は間違いを犯すのか。蝶の誤産卵は、今回のサマースクールに参加する前からの疑問の一つでした。

サマースクールで実験して得た答えは「それが進化ということ」でした。僕は最初そう言われた時、よくわかりませんでした。「進化」というのは、適者生存や自然選択といった理想的な方向への動きだと思うからです。

「進化」とはいったい何なのか? 参加した2日間ずっと考えていました。ふと「世代を繰り返すごとに蓄積されていく変化」という尾崎先生の言葉が頭に浮かび、自分なりの答えを見つけることができました。

完璧なシステムの中で、少しずつ小さな変異が起き、これらが世代を超えて蓄積されることで、特異点が誕生し、進化が実現する。蝶が誤産卵をする理由は、完璧なシステムから逃れる行為が進化のきっかけとなる変異を蓄積させたからである。この答えを出したとき、同時にこんなことも考えました。食草に産卵することによって種を継続させるが、あえてそれを外すことによって、その先の進化を視野に入れて、自らのシステムを超えるシステムもシステム化している。これがDNAが完璧なシステムである理由なのではないかと。そう考えたとき、なんて生物はすごいんだろうと心から思いました。このことを気付かさせてくれたBRHの先生方に心から感謝します。ありがとうございました。

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