サマースクール 2015年度の報告

チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ
「アゲハチョウの食草認識のしくみを解明しよう」

今年度の参加者は、中学生が一人、高校生が二人、高校の教員が二人という構成でした。実験のテーマは、産卵行動と関連する遺伝子について、働いている組織を確認して、その機能について考察していただくという内容でした。

アゲハチョウ成虫は花の蜜を飲んでいるので、自らは植物の葉を食べることはないのですが、植物に含まれている化合物を認識して幼虫が食べられることを確認しますが、その仕組みを解明するために行ってきた大切な実験です。

全ての体細胞に基本的には同じゲノムDNAが含まれていますが、発現している遺伝子の種類や組み合わせや量は組織ごとに異なります。アゲハチョウの産卵行動を誘発する化合物は、メス成虫に"味"として認識されますので、幼虫が食べる餌を見分けるための"味見"が行われます。この味見の時に使うのが、成虫の前脚にある化学感覚毛です。植物に含まれている、産卵行動を誘発する化合物のことを「産卵刺激物質」といいますが、産卵行動刺激物質を"味"として感じるための受容体(センサー)遺伝子が、メス成虫の前脚のみで働いているのです。遺伝子が働く時には、まずmRNAが作られます。

そこで、アゲハチョウの成虫から、前脚・中脚・後脚・触角・口吻の各組織を切り取り、RNAの抽出作業を行って頂きました。実験に用いた組織のいくつかは、味や匂いを感じるための感覚器官ですが、産卵行動と関わる"味見"遺伝子がどこで働いているのか確かめる作業です。

昆虫の組織を液体窒素で凍結し、マイクロチューブ内ですり潰すと粉末状になります。この作業でしっかり粉砕できていないと、RNAの抽出結果に大きな影響があります。初日に行った作業は、RNA抽出と逆転写反応という目に見えないものを扱う内容で、初めて取り組む参加者の皆さんには作業工程全体のどの部分に取り組んでいるのかわかりにくかった様です。しかも二日目最後の電気泳動の結果を見るまでは上手くいっているのかどうかも解らないので、不安を感じながらの進行だったのではないでしょうか。

残念ながら結果は、からなず全身で増えるはずの遺伝子も増幅が観察されず、組織ごとの遺伝子発現の違いを観察していただくことはできませんでした。

サマークスールで取り組んでいただいた実験作業は、指定の順番どおりに決まった量の薬品を混ぜる作業を淡々と進めていかなくてはならず、操作のステップがとても多く、忙しい二日間になったと思います。予定していた結果を見ていただくことはできませんでしたが、今回のサマースクールでの経験が何かのお役に立つことを願っています。

尾崎克久(研究員)

参加者の感想

初めて白衣を着ました

参加者:M.I.

定年退職し気持ちに余裕のできた今年、長年の希望だった、サマースクールに参加しました。小、中学校時代は、生き物について、調べたり実験したりするのが好きでした。しかし、大学で数学を専門にし、高校で数学を教えて37年、小、中学校時代の気持ちは過去のものとなっていました。でもこの2日間、かつての気持ちを思い起こすことが出来ました。

初めて白衣を着ました。初めて、マイクロピペット、ボルテックス、QuickGene、PCRや電気泳動の機器に触れ、様々な酵素、薬品を計量し、とても新鮮でした。極微量を扱い、反応が目に見えないので注意深くやらなければならず、とても疲れましたが、充実していました。数学の記号操作とは別の、生命現象に触れているという楽しさがありました。

2日間に及ぶ実験の結果は、目標どおりにはなりませんでしたが、その原因を考えているときも謎解きのようで楽しかったです。(RNAからDNAへの逆転写がうまくいかなかった?)

全体をコーディネートして下さった尾崎さん、実験をリードして下さった吉澤さん、手助けして頂いた廣崎さん、私に2日間の夢を見させて頂きありがとうございました。

ランチパーティーで、私が毎回楽しみにしていたペーパークラフトについて話せた平川さん、生命誌研究館のコンセプトや研究体制についてお話を伺った中村館長、楽しいひと時でした。
職員の皆様、2回の昼食の準備、後片付けありがとうございました。

「生命誌研究館あり 遠方より参加す また愉しからずや」

驚きの連続!

参加者:M.M.

私が今回参加させていただいた「チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ」では、チョウのからだのどの部分で味覚細胞の遺伝子が発現しているかを調べる実験をおこないました。

まず、尾崎先生からチョウの親が食草を見分けるしくみ、なぜその必要があるのかと、今回の実験の概略についてわかりやすく説明していただき、続いて研究員の吉澤さんの指導に従って、チョウのからだの各部分からRNAを取り出し、遺伝子の発現を確認する操作に入りました。

細かく正確な操作や手順が必要なのはもちろん、DNAはどの細胞でも共通に含まれているため、発現の異なるRNAで調べるという考え方や、このような実験がキット化されていること、頭を外されたチョウが2日経っても生きていることなどなど、私にとって驚きの連続でした。

残念ながら、実験の結果はどの部分からもRNAは確認されませんでしたが、尾崎先生から、「一つの説を証明するためには、それを否定する可能性のあるすべてを検証しなければならず、自分の説を否定する実験を積み重ねるのはとても精神的にしんどいことです」という貴重なお話をいただきました。改めて、今回のような失敗も含めて、研究のためには非常な忍耐と努力が必要なのだと感じました。ただ、そのようなお話のときでも、先生が本当に楽しそうに話されているのが大変印象的でした。

あっという間の二日間でしたが、館長の中村先生をはじめ、ご講演いただいた西川先生、運営にあたられた生命誌研究館のスタッフの方々、ラボでご一緒させていただいた皆さん、大変お世話になりました。 また、根気よく私たちの実験の指導にあたってくださった吉澤さん、さまざまな準備や手助けをしてくださった廣埼さん、そして真夏日の中を、汗だくで実験のためのチョウを捕まえてくださった尾崎先生、本当にありがとうございました。

この夏の思い出

参加者:J.S.

今回、私は学校の生物研究部の先輩の紹介でサマースクールに参加することにしました。チョウの食草の仕組みを探るラボでは、普段使うことがないようなピペットやマイクロチューブなどの器具を使わせていただきとても楽しく実験を行うことができました。難しい実験でしたが、先生の説明をよく聞くと実験の内容が分かってきました。今回、充分に理解できなかった事はこれからの学校の授業やクラブ活動を通じて理解できるようになることを楽しみに思います。

DNAの電気泳動は失敗してしまいましたが、操作の流れと意味を理解し実験を進めることや研究室を見せていただきとても有意義な2日間でした。今回、指導いただきましたたくさんの先生方には普段の学校生活ではまだまだ経験できない貴重な体験をさせていただき、有難うございました。

サマースクールを終えて

参加者:K.I.

僕は8月6日、7日にサマースクールに参加させていただきました。僕は先生に「大学の研究室に入れるし、楽しいで」と言われて興味を持ち、貴重な経験になると思い、とても楽しみにしていました。しかし、前日は良く眠れなくて寝不足の状態で参加し、話も難しかったので分からなかったところが少しあったり、最終的に結果は失敗に終ったりと残念なことがたくさんありました。

しかし、そんな中で初めて知ったことがいくつかありました。1つ目は、チョウの幼虫は決まった種類の植物しか食べないことです。僕の庭にもたくさんの蝶の幼虫がいますが、2、3種類ぐらいの幼虫がいたのでどれでもいいと思っていたのですが、これを知ってもう1回自分の庭を観察してみようと思いました。

2つ目は、チョウは前脚で幼虫が食べられるかどうか味見をしていることです。僕は前脚に味覚器官があるなんて考えられなかったのでとても驚きました。

3つ目は、チョウは人間と違って、頭部が無くなっても死なないということです。僕は、頭部に脳があり、頭部が無くなる=死だと思っていたのですが、頭を取った次の日でも生きていたのでとても驚きました。

もちろん楽しかったこと、印象に残ったこともあります。1つ目は、大学の研究室に入って、実験ができたことです。僕はチョウが食草を見分けるしくみを探るラボでやる内容は、ほとんど話を聞くだけだと思っていたので、実験、しかも本物の研究で使う実験道具が伝えたのでとても楽しかったです。

2つ目は、僕が知らない薬品や道具を使えたことです。中学の時は、塩酸や水酸化ナトリウムといった、とても有名な薬品や、ビーカーや試験管などの一般的な道具しか使ったことがなかったのですが、今回は全然聞いたことがないような薬品や、ドラマでよくある道具を使えたのでとても貴重な体験ができ、とても楽しかったです。

3つ目は、協力して何かを成し遂げられたことです。僕はすぐ飽きる性格で、途中で諦めたりするのですが、今回は最後まで楽しく実験や発表用のポスター製作を他の参加者の方と協力して出来たのでとても楽しかったです。

このように、実験は失敗しましたが、分かったことや楽しかったこと、印象に残ったことがたくさんあったので、とても有意義な時間を過ごすことができました。もし機会があればまた参加したいです。今回はありがとうございました。

新しい世界を知った

参加者:H.T.

サマースクールに参加させていただき、ありがとうございました。初めての体験ばかりで、とても面白かったです。電気泳動やPCRを行ったことが印象深いです。実験結果がうまくでなかったので、学校でこれらの実験をやらせてもらおうと思ったのですが、学校には設備がなく、できなかったです。今回の体験を、夏休みの宿題や英語のプレゼンテーションで活用しました。すると、校内で賞をいただきました。成績も上がりそうです。

今まで蝶のことはほとんど何も知らなかったので、今回参加させていただいたことで知識も広がり、新しい世界を知ることができました。今回、たくさんの方にお世話になったこと、とても感謝しています。
そして、貴重な体験をさせていただきありがとうございました。
来年も都合が合えば参加したいと思っています。

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