サマースクール 2014年度の報告

表現を通して生きものを考えるセクター
「立体系統樹を作ってみよう」

系統樹は、生きものの歴史とつながりを樹に映し出す表現です。以前生命誌研究館展示ホール奥に立体系統樹がありましたが、老朽化のため惜しまれつつ撤去されました。そこで、もし再建するならどうしようかと「立体系統樹を作ってみよう」というテーマでサマースクールを行いました。近年DNA配列データ生産の進歩によって分子による系統解析から生きものの関係が大きく見直されているのです。

今年のスクール生は、生命誌に共感くださる社会人が6名。皆さんそれぞれの分野でご活躍ですから、まずは足並みを揃えていただこうと事前に「知っているかぎりの生物名を挙げ、それらを結ぶ系統樹(生命の樹)を描いてください」という課題をやっていただきました。

初日は、まずは最新の分類と系統について、真核生物はいまや7つのカタカナの名前のグループ分かれ、私たち動物はオピストコンタという1つのグループにアメーバやキノコと一緒に分類されていることなどをお聞きいただきました。そしていよいよ宿題の発表です。登場する生きものは、ネコやイヌ、アリやトンボと身近な動物、お庭のお花や畑のお野菜は品種まで指定されています。系統樹の制作の方針はすぐに決まりました。家庭や店先で見かける動植物たちの歴史と関係をたっぷり盛り込んだ系統樹です。これぞ生命誌の求める日常と科学の重ね描きでしょう。

制作も佳境にはいる2日目は、生命誕生の太古の海から、にょきにょきと生命の樹が立ち上がり、スノーボールアースを示すブルーのラインの後に真核生物が産まれ、カンブリア爆発が起こります。そこにそれぞれ誕生した生物の枝を生やし、思い思いの生きものを飾っていきます。一気に約30門に分かれ多様化した動物と共進化しながら巧みな生き方を模索する植物と、身近な生きものの道のりを確認しながらの作業です。あれもこれもと気持ちが入って重心が不安定になっていく樹を建設畑の生徒さんがみごとに支え、ついに立体系統樹が完成しました。そして発表会で38億年の生命誌の物語を紡ぐことができました。2日間生命誌とつきあうと、教えるでもなく自然と生命誌の語り手になるのです。表現セクターの日常を知っていただくスクールですが、終わった後には、逆に表現セクターの仕事をスクール生の皆さんに教わった思いがします。2日間おつかれさまでした。私たちももっと生命誌、やっていきます。

平川美夏(スタッフ)

参加者の感想

世界観の広がり

参加者:K.K.

JT生命誌研究館、築20年とは思えない清潔で美しい空間でした。

万全のサポート体制で、数日の間に楽しみながら生きものの系統について学ぶことができる貴重な体験をさせていただき、とても感謝しております。

知り合いの先生や学生、特に生きもの好きの人達に、ここの宣伝をしていきたいと思います。

年齢や出身もバラバラな私たちの質問・疑問に、それぞれの専門の方がわかりやすく答えて、またすぐに写真や図などの資料見せていただき、いたれりつくせりでした。おかげさまで、あの短い時間で生きものの系統樹を、グループのみなさまと協力しながらなんとか完成させ、発表することができてうれしかったです。

生きものの発展の歴史を、分子時計から何十億年も時間を推し測る研究は、哲学や宗教にも似ているようで、音楽を奏でるかのようなイメージがしました。

系統樹作りの最後の方で、同じスクール生の方が「6000万年前」を「最近」と言うのを聞いて、とてもおもしろかったです。この"表現"のグループに参加したことで、私の世界観が広がり、時間の感覚スケールが大きくなったように感じました。

機会があれば、またサマースクールに参加したいです。ありがとうございました。

科学の目で、現実を見ていくことの面白さ

参加者:T.K.

2日間のサマースクール、ありがとうございました。念願の生命科学研究館に伺えて、とても楽しい2日間でした。

感想文を提出するように言われて、実は内心億劫でした。と言うのも、私は今回、生物の命の根源に「香り」がどう関わっているかを自分のテーマにしていて、そのものずばりのクラスに入れていただけるのは無理と承知していながら、「表現のクラス」のテーマが、正直、今一つまらなかったのです。 最後の感想の中で、中村先生が「部屋に入った時、幼稚園かと思った」とおっしゃた通り私も「こんなことをして、何を学ばせようとしているのか?」と感じていました。

そして、帰ってからずっと考えて、やっと整理ができてきました。

あれは、「生命誌の立体図」を作ろうとしたのです。

  1. 1) 「カンブリア爆発」までの約30億年を、針金や色で表そうとしたのは良かった。
  2. 2) 生き物たちを、言葉でなく、写真で表そうとしたのも良かった。
  3. 3) なのに、生き物たちの大きさと数が "立体的"に表現できていなかった。

学問的には、生き物たちを、いろいろな門や種に分類しています。そして、それらには名前がついています。名前は言葉です。私たちは、この便利な「言葉」というものに、つい騙されてしまうのです。そのための「立体図」だったのだと思いました。立体は、「言葉」ではなく「現実」です。言葉では、「犬」にも、「大腸菌」にも、1つの名前がついています。しかし、立体図で表現する時、大きさは全く違います。

現代に至るも、「真正細菌」と「古細菌」の数は、「真核生物」と匹敵する位の数がいるとのことですが、その大きさは全く違います。この当たりの、実際の生命誌の現実の目に見える姿を、立体図にしようと、もっと考えれば良かったのか そうすれば、「表現セクター」の時間を、もっと楽しめただろう、と今になって反省しています。 その"表現が難しいテーマ"にもっと真剣に取り組めば良かった、少し他のメンバーの方々の動きに遠慮して、自分を出さずに他人ごとになってしまったな、と反省しています。

やはり科学を学んで面白いのは、「表現」として人に伝えようとする時でも、あくまで「事実」「本質」を追求していくことにあると思います。

しかし、立体図を作ろうとする時の、生物の大きさと数の変化のデータはあるのだろうか?過去のことはさておき、今現在、各生物(細菌や病原菌や魚や植物や動物や‥‥)の大きさと数を概算でもいいから、地球全体として把握しようとしている機関はあるのだろうか?お互いに、食べたり食べられたりの捕食関係にあり、こういうテーマは「複雑系」になってしまうのだろうか?

今、放射能のことがあったり、脱法(危険)ハーブのことがあったり、生命が危険にさらされている場面が多くあります。未来から見れば、現代も生命誌の1ページでしょう。今の現実を、今把握しておくことが大事だと、感じました。大変な作業でしょうが、これだけコンピューターが発達している現在、かなりのことが出来るのではないか。

地球や宇宙の現実は、とてもすごく、人間が「科学」として捉えていることは、本当にごくごく一部にすぎない、のだと思います。それでも、過去多くの方々が研究を重ねて実証してこられたこと、今現在多くの方々が研究に取り組まれていること、そこから少しでも学べたらと思っています。

改めて、科学の目で、現実を見ていくことの面白さを感じています。2日間、本当に貴重な時間をありがとうございました。いろいろお世話をしてくださったことに、深く感謝をしています。

「生命の樹」と素晴らしき仲間たち

参加者:R.M.

私は、昨年と今年の連続2回に渡り参加させて頂きました。昨年は新新・生命誌絵巻を作り、非常に大きな達成感と喜びを感じました。そして、同時に、「ヒトが人として、この地球に生きる多様な生きものの一員として、私たちは、どのように生きていくべきなのか?」と大きな課題を頂いたと感じました。今年も学んで、その課題を探求し続けたいと想いがありました。

愛知の私を含め、全国各地から集まった6名が結束して、課題の立体系統樹の制作にとりかかりました。調べるほど多岐で膨大な数に渡る動植物の系統樹を、どのように形作れるのだろうか?しかも立体で?!と呆然としていましたが、スタッフの方々が、資料や多種な資材を提供してくださいます。その中で私が1番インスパイアーされたのは、「生命の樹」という生命感を樹木で表した布の芸術作品の資料でした。その資料から38億年の母なる太古の海から立ち上がる生命の樹(立体系統樹)のイメージが湧き上がりました。

制作では、6人の知恵を持ち寄り、幹を時間軸として工夫したり、どんどん進んでいきます。しかし、太古の海に生まれた原初生命体から、38億年かけ爆発的に生命が増え続けた立体系統樹は頭が重く、直立を維持するのが難しいのです。そんな中、唯一の男性参加者で日本各地の土木建築に携わってきたOさんが、立体系統樹の土台と基礎づくりを担って下さり、完成することが出来ました。発表でも全員のチームワークを結束しました。最後にまとめてくれたOさんの言葉、「なんとか立ち上がっているこの系統樹は、現在の地球上の生態系バランスの不安定さを表しているようです。私たちの身体の多くも水分であり、太古の海と同じ成分であるとも言われている。海を大切にしましょう。地球を大切にしましょう。(要約)」は、心に染みました。私は、地球の太古の海から立ち上がった美しい生命の樹を、人類の手で枯れさすことだけはしたくない。愛くしみ、これからも美しく育っていくよう、自然と響き合いながら生きていきたいと志をたてました。この志は昨年からの課題を受けて生まれたものでもあります。一緒に生命の樹を立ち上げた素晴らしき仲間や、支えて下さったスタッフの皆様に、感謝の気持ちが溢れます。

また、ランチタイムでは、中村桂子館長は私の拙い問いにも、じっくり耳を傾けてくださりアドバイスもくださいました。西川伸一顧問が現在の科学の現場を、参加者に非常に真摯な姿勢でレクチャーしてくださったことも忘れられない思い出です。

本当に素晴らしい体験をしたサマースクールの2日間でした。ありがとうございました。

生きていることの重さと怖さ

参加者:H.O.

生命系統樹を立体模型で表現することは、生きている重さ怖さを感じることになりました。

原始生命体が発生し、現在までの長く険しい道のり、いつ消滅してもおかしくない状況がたくさんあったと思いました。

立体生命系統樹はいつ転んでも、いや、今、倒壊してしまってもおかしくない恐ろしさをもっとハッキリと表現し説明すべきでした。

なぜなら、人生の大半を社会資本整備の現場で歩んできた私には、今にも崩れそうな立体生命系統樹は作りたくなかったのです。災害から人々の生命財産を守り、持続ある社会の発展の基盤、すなわち、道路、港湾、空港、鉄道、上下水道などが丈夫で長持ちが取り柄の社会資本と信じてきたからです。

結果から言えば、私たち表現グループの作った模型は、今にも崩れそうで、今の生命の歴史の危うさを表現しており成功だったのかもしれません。

2010年ごろに、この宇宙がわれわれの知らないもので満ちていることがわかってきました。われわれを創っている元素は宇宙を創っているものの4%でしかなく、残りの96%は暗黒物質と暗黒エネルギーとのことです。人類がまだ見ることも触るもともできないこの二つ。

人類の起源は、天の川銀河以外から地球に降り立ったのかもしれません。

日本の神話が物語るように・・・

最後に、スタッフの皆様と中村館長に大変お世話になり、ありがとうございました。

今 生きている奇跡、出会いに感謝!

参加者:M.I.

私にとって高槻にあるワクワクがいっぱいつまった場所...それがJT生命誌研究館です。高度な研究内容も美しく、すっきりわかりやすく表現されていて こどもから大人まで興味深く楽しむことができます。待ち遠しいのが季刊BRHカード......大切な宝石箱をあける気持ちに似ています。そして大切に保存しています。エッセンスがつまっていて、もっと知りたいと興味をかきたてられ、そこからひろがりをもたせるように工夫されています。おまけが最高にステキで、一度に作ってしまうのがもったいないくらいです。

今回 サマースクールで「表現を通して生き物を考える」セクターに参加できて とてもうれしかったです。今 生きていることが楽しく、不思議がいっぱいの毎日.....奇跡的な確率で同じ時を過ごしている生物.........そのなかでわがもの顔の人間..... (このままでいいのかな?いいわけないよね..)長い時間をかけて進化し、今 生き残っている、一生懸命いきている生物がいとおしいです。

テーマは「立体系統樹を作ってみよう」平川美夏先生はじめSICPスタッフの方々に 基礎的知識や生命の系統樹の資料やアドバイス、アイディアをいただき(それも優しく丁寧に心地よく)、最初はテーマが大きすぎてどうしたらいいのか全く手が出ない状態から、みんなで力を合わせて具体的に形にしていこうと思えるようになりました。系統樹は各々アイディアを出しつつ、手を動かし形作っていきました。作業は楽しく時間のたつのがあっという間でした。まとめるのが大変な所や行き詰った時など スタッフの方々が力を貸してくださったり、すばやく的確な資料を準備してくださったりと感謝のひとことです。おかげさまで 自分たちなりの楽しい遊びの要素を加えた立体系統樹が完成、発表できました。

また西川顧問の興味深いサイエ ンスレクチャーや、スタッフや他ラボ参加者との交流できるランチパーティなどいろいろご配慮いただき 本当に充実した二日間でした。

スクールは終わりましたが、もっと知りたくなりました。EVOLUTION、地球 生命の大進化、生物多様性、地球46億年史、生命の誕生と進化の38億年、系統樹曼荼羅、進化の地図帳、内臓の進化........今 たくさんの本にかこまれています。 時間がかかるかもしれませんが読みたいと思っています。

命とむきあい考える機会を下さったことや、生命誌研究館の皆さまや参加者の皆さんとのであいは 忘れられない大切な体験でした。

ありがとうございました。

表現の力

参加者:K.K.

小さな頃から生きものが好きで、学生時代は生物学を専攻していました。その頃のわくわくがよみがえり、さらにパワーアップさせてくれる素敵な2日間でした。

私達の課題は、「立体系統樹をつくる」こと。初日の午後には、生命誕生から現在までの生きものの進化の歴史を知るレクチャーを受けました。壮大なスケールの話を、まるで体験してきたかのように語るスタッフのみなさん。自分の中に、新たな38億年の時間軸が生まれるのを感じました。

「表現を通して生きものを考える」とはまさにその通りで、いざ表現しようと思うと、自分の知識・認識のあやふやさに気がつきました。これまで何度挑戦しても吸収できなかった内容が、表現をする過程ですっと自分の体にしみこんでいくのを感じました。表現の力は、受けとる時のものとして語られることが多いですが、それだけではないのですね。むしろ、作り出す時にこそ大きなパワーを発揮するのだと知りました。

また、各地からいろんなバックグラウンドを持った素敵な参加者のみなさんが集まって、あれこれ一緒に考え、手を動かしながらいろんなお話ができたことも、嬉しい体験でした。そんな素敵な人が集まってくる生命誌研究館ってすごい!2日間がとっても短く感じました。今度はじっくりと展示を見学に行きたいと思います。ありがとうございました。

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