サマースクール 2013年度の報告

チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ
「チョウはどうやって植物を見わけているのか探ってみよう」

今年度の参加者は、高校の教員と大学生の2名でした。実験のテーマは、組織毎に異なる遺伝子の発現を比較する事により、産卵行動と関連する遺伝子について考察していただくという内容でした。

昆虫と植物は、化合物を介して強固に結びつけられていますが、その仕組みを解明するために行ってきた大切な実験です。

基本的に全ての組織に同じゲノムDNAがありますが、発現している遺伝子の種類や組み合わせや量は組織ごとに異なります。アゲハチョウの産卵行動を誘発する化合物は、メス成虫に“味”として認識されますので、幼虫が食べる餌を見分けるための“味見”が成虫の前脚によって行われます。そのため、産卵行動刺激物質の“味”を感じるための受容体遺伝子が、メス成虫の前脚のみで働いているのです。

そこで、アゲハチョウの成虫から、前脚・中脚・触角・口吻の各組織を切り取り、RNAの抽出作業を行って頂きました。実験に用いた組織は、中脚以外は味や匂いを感じるための感覚組織ですが、産卵行動と関わる“味見”遺伝子がどこで働いているのか確かめる作業です。

参加した皆さんには若干心苦しい作業になったと思いますが、大変熱心に取り組んでいただけました。初日に行った作業は、目に見えないものを扱う内容で、しかも二日目最後の結果を見るまでは上手くいっているのかどうかも解らないので、不安を感じながらの進行だったのではないでしょうか。二日目に行ったPCRの結果は順調で、全身で発現している遺伝子と、組織特異的に発現している味覚受容体遺伝子の違いを観察することができました。

日程最後に行われる成果発表会の準備も順調で、かつて無いほど余裕を持って取り組んでいらっしゃったのが印象的でした。

実験作業というのは順番どおりに進めていかなくてはならないステップが多く、とても忙しい二日間になったと思いますが、サマースクールでの経験が何かのお役に立つことを願っています。

尾崎克久(研究員)

参加者の感想

アゲハの飼育の見学とRT-PCRを体験して

参加者:K.K.

生命誌研究館サマースクールで、私は「チョウが食草を見分ける仕組みをさぐるラボ」で、アゲハの味覚受容体の一種、シネフリン受容体の発現を確認する実験をさせて頂きました。

アゲハが食草を確認するときに、葉を数回たたくドラミングの映像を見るのも初めてでしたし、アゲハのメスの前脚に多く存在する感覚毛を実体顕微鏡で見たのも初めてでした。また、アゲハの飼育や、ハンドペアリングによる交尾も見せて頂き、非常に興味深いものでした。また、アゲハの飼育にカイコの餌に柑橘類の葉の粉末で「味付け」し、尾崎先生が「羊羹のような」とおっしゃっていた餌を幼虫がもぐもぐ食べる様子には感動しました。幼虫は上に移動しようとする性質があるので、シャーレの上部に餌を塗っておかないといけないなど、尾崎先生の工夫など、プロの技に感心しました。研究者の方々が実験生物を飼育する方法には以前から興味がありましたが、実際に見せて頂くと、とても面白く、様々な工夫に感心させられることばかりでした。

実習では、味覚受容体であるシネフリン受容体が、チョウのからだのどこで発現するかを、RT-PCRによって確認するものでした。これは尾崎先生の研究成果で、研究成果を追試させて頂けたことはとても興味深いものでした。15年ほど前に私が大学で学んだときとは違って、かなり実験器具が進歩しており驚くことばかりでした。

実習期間、尾崎先生、廣﨑先生には、手取り足取り何から何まで教えて頂きました。また、忙しい研究の間に、実習メニューをつくり、試薬の準備、印刷物の準備など、準備にも多くの手間と時間が費やされていることを推し量ることができます。先生方が自らの実験を止めて、外部の私たちを受け入れて頂けたことに非常に感謝いたします。生命誌研究館のスタッフの方々、学生の方々全員でこのサマースクールを支え、私たちスクール生のサポートをしているということにも非常に驚き、有難く思いました。この2日間、ご指導下さった尾崎先生、廣崎先生をはじめ、スタッフ・学生の方々に心より感謝申し上げます。

自発的に参加したサマースクールで

参加者:R.S.

この夏、二日間にわたって私はJT生命誌研究館でサマースクールに参加させていただきましたが、とても貴重な体験をいろいろとさせて頂きました。

特に蝶のハンドペアリングや、大学で操作したことがない、いろいろな実験機器を見たり、他のサマースクール生のいろいろな話を聞かせて頂いたことはとても印象深かったです。

他のサマースクール生の方々は、高校の先生だったり、大学院生だったり、中学生だったり、自分で研究をしている主婦さんだったりと、普段は一堂に会すことがないような方たちでしたが、皆さんそれぞれの形で生物学に興味があって、凄いと感じましたし、良い刺激になりました。

私は大学で理学部生物科学科に所属していることもあり、1回生の頃から2年以上、いろいろな実験をしてきましたが、改めて振り返ると「面白い!」と心から思える実験はあまりありませんでした。それは学校という環境で、自分が「やらされている」と感じていたからというのが大きな理由だと思います。しかし私は今回、自発的に参加したサマースクールで行った実験を素直に面白い、と感じることができました。尾崎先生が丁寧に解説してくださったので、今まで良くわかっていなかった実験操作の意味も、きちんと理解することができました。大学院進学を考えていますが、この先も生物学の研究を楽しんで行うことができそうだと自信がつきました。

実際、サマースクールが終わってから、田舎にある岡山の祖母の家に行ったのですが、そこで何匹かアゲハチョウを見て、ドラミングしないかなと気づいたら観察していました。結果、してくれませんでしたが、なんだか少し研究者の気持ちになれた気がしました。

最後になりましたが、初日の午前中の館内ツアーに参加できなかったので、研究館のいろいろ面白そうな展示物を少ししかみることができなかったので残念です。また別の機会に見に行きたいと思っています。今回は、本当にありがとうございました。

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