サマースクール 2010年度の報告

チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ
「チョウはどうやって植物を見わけているのか探ってみよう」

今年度の参加者は、男性1名、女性1名の合計2名でした。実験のテーマは、組織毎に異なる遺伝子の発現を比較する事、そして、RNAiによって遺伝子の機能を阻害した場合に、どのような変化が起きるのかを確認する事です。いわば、細胞の中で起きている現象を、目で見れるようにする取り組みです。

基本的に全ての組織に同じゲノムDNAがありますが、発現している遺伝子の種類や量は組織ごとに異なります。我々が研究対象としている味覚受容体遺伝子の発現は、植物の味見をしているメスの前脚ふ節に特異性を示します。反対に、タンパク質の合成に関連する遺伝子は、全ての細胞で発現しているので全身のどの組織でも観察されます。この違いを観察するため、アゲハチョウの組織ごとにRNAを抽出し、逆転写反応を行ってDNAに変換した後、PCRによる各遺伝子の増幅を試みました。実験に用いたチョウは、RNAiで味覚受容体遺伝子の働きを阻害したメス成虫、二本鎖RNAを注射する代わりに水を注射したもの(つまり何も影響がないので通常のチョウ)、何も注射していない通常のチョウの3種類でした。RNAを抽出した組織は、前脚ふ節、中脚ふ節、後脚ふ節、触覚の4箇所でした。

参加した二人には、おそらく大学生であっても難しいと感じる説明を沢山聞いてもらうことになりましたが、とても熱心に聞いてくれて、理解しようと努力してくれている事が伝わってきました。作業が途切れると様々な質問が飛び出し、実験に対する熱意を感じました。質問の内容は実験に直接関わることから分子生物学の基礎知識的な内容におよび、まるで大学の集中講義のような内容になりました。

二人とも元々チョウに興味をお持ちで、大変詳しかったので、説明する側にも熱が入りました。また、サマースクールの実験テーマの他に、培養細胞を用いたカルシウムイメージング法の実験や、人工飼料を用いたアゲハチョウの飼育の様子を見ていただきましたが、こちらも大変熱心に取り組んでいました。

二日間で予定していた実験を全て完了することができて、一安心ができたところで、最後の成果発表会に向けた準備が始まりました。二日間とても熱心に取り組んでいた成果が存分に発揮されて、とてもしっかりと当ラボの研究課題やサマースクールの実験テーマの内容を理解していた事に驚かされました。

結果を得るために順を追って取り組んでいかなくてはならないステップが多く、とても忙しい二日間だったと思いますが、ここで得られた経験と知識が、今後何らかのお役に立てることを願っています。

尾崎克久(研究員)

参加者の感想

目に見えない遺伝子の変化を扱う

参加者:K.S.

僕はジャコウアゲハの研究とまでは言えませんが、「研究のようなこと」をしています。これは行動や生態といった目に見えるものに着眼したものです。一方、今回の僕が参加したラボでは、目に見えない遺伝子を扱うものでした。

このサマースクールに参加し、目に見えない遺伝子を操作することで、目に見えた変化が現れることを身をもって体験できました。いままでは、目に見えないものを扱う「分子生物学」に興味を持つことが出来ませんでしたが、このサマースクールで「分子生物学」に興味を持つことが出来ました。

2010年サマースクールに参加して

参加者:A.O.

私は2010年サマースクールのうち、「チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ」に参加しました。いくつかある教室のうち、このラボを選んだのは、アゲハチョウが私にとってとても身近な生き物だったことからです。子供の頃から庭の山椒の木に、毎年毎年やってくるアゲハチョウの幼虫。卵を見つけたり、だんだんと成長していく幼虫を見るのは毎年の楽しみでした。このごろは庭にオニユズ、キンカンも加わり、ますますアゲハチョウがやってくるようになりました。毎年の楽しみは、やってきて産み付けられた、特にナミアゲハの卵から孵った幼虫を自分が育てている食草で飼うということです。毎年、そろそろチョウがやってくる時期になると、お休みの日、ベランダに並べたキンカンの若い芽にメスのナミアゲハがやってこないか、部屋の中で待つのです。いつも見張っているわけではないので、いつの間にか幼虫が増えていることも多く、そういう時は、とても得した気分になります。

さて、そんな風にチョウを飼わなくても、身近な生き物のアゲハチョウが特定の草を食べて大きくなること、それぞれの種類で「つく」植物が違うことはよく知られていることだと思います。私も小さいとき、同じ植物にばかりやってくる虫にどうやって、その植物が自分の子供にとって食べ物となるものと判断しているのか、とても気になっていました。その後、前足で味を確認している、そういう器官があるのだ、とういところまでは知りましたが、それ以上詳しいことは知りませんでした。どちらかというと上手に大きく育てられるか、飼っている最中どんな様子か、何をしているかということに主な関心がありました。ですので、サマースクールのこのテーマを見たとき、そういえば、大まかな約束事はしっていても、それがいったいどういう仕組みなのか、また、その仕組みを「探る」とは、何を、どうやって探るのだろうと、ぜひ知りたい、参加したいと思ったのです。

私たちがテーマとして与えられたのは、ナミアゲハが食草を見分けるための手がかりとなる味となる物質に反応するたんぱく質、そのたんぱく質生成に欠かせないRNAが、特定の部位のみにあり、その他の部位には無い、ということを実験を通して確認するというものでした。与えられたテーマはもちろんですが、私にはもう一つテーマがありました。私は実験器具を触るのも初めて、詳しい仕組みを聞くのも初めてという状態でしたので、これから行う実験のそれぞれのステップが、目標のどの部分にあたるものか、理解しながら行いたい、と思っていたのです。実験作業自体は楽しく、作業結果が出るとうれしいのですが、「出来た」ということに夢中にならずに、その作業が何のためのものか、結果が何を表すのか、今の作業で何を確認できたのかを意識しようと思いました。実際にセミナーが始まると、途中、納得したような気になった事も、改めて自分で説明できるか確認してみると、習ったはずの事も、あやふやなところ、あやふやな言葉がありました。そのため、途中で指導の先生方に、基本的な質問や、確認のための繰り返し同じような質問もさせていただきました。そのつど、丁寧に指導の先生方に答えていただいたおかげで、納得しながら作業を行うことができました。とても感謝しています。

私のように、未経験でも実験に参加でき、作業が行え、理解ができたのは、先生方の丁寧な指導があったからだと思います。小さな疑問にも丁寧にわかるまで説明してくださったおかげで、最後まで、今していることの意味、作業のステップを大まかにですが理解することができました。そのかげで、戸惑うことなく、すんなりと作業に入れましたし、自分なりのレベルではありますが、テーマを理解することができました。

また、何かテーマを持ってそのための実験というのを体験できたのは、とても私にとっては貴重なものでした。テレビ、本、その他で、いろいろな研究の話は聞くことはあります。しかし、その中身を体験できることはありませんでした。今回は、ほんの一部ではありますが、そういった体験、研究はどうやって行っていくものなのか、ということに触れられたことが、とても、今まで見聞きしたものに対して、納得する、実感されるものとなり、心に残りました。説明を聞いただけ、結果を聞いただけ、見ただけ、では納得したような気になってしまうことがあります。そういった状態から、少しだけ、理解に近づけたような感覚があり、実際に体験し、確認することのうれしさを感じました。

また、同じテーマラボに参加していた仲間がいたことも、とてもよかったです。セミナーが最後まで楽しく、実験が進められたのは、参加仲間の協力のおかげもありました。頼りになる仲間と先生方に恵まれて、「チョウが食草を見分けるしくみを探る」ラボでよかったなあと本当に思いました。セミナー中は、仲間とはクラスメイトのような気分も味わえました。

最後の発表では準備時間が足りなくて、ちょっと心残りもありましたが、実験結果、セミナーテーマについては、自分なりに納得し、理解できたと思っています。とても楽しく、また、そうだったのかと思うことも多かったので、セミナーを終え、帰った後は、習った内容を人に説明したくてしょうがなくなりました(実際ちょっとした)。今回習った事について、より理解するために、自分で調べられることを調べていこうと思っています。

2日間という短い時間でしたが、充実した2日間でした。調べる喜び、知る喜びに加えて、社会人になって、久しぶりに「教わる喜び」(質問しまくってもいい喜び?)も味わえた2日間、よい夏休みを過ごせてよかったなと思いました。お世話になった方々、また、同じラボになった仲間には感謝しています。ありがとうございました。

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