サイエンス・コミュニケーション&プロダクション(SICP)セクター

 DNA複製図版チーム

ビフォー
 分子生物の教科書では必ず見かける「DNA複製フォークの図」。DNAの複製は生きものの基本の中の基本、そしてとても見事な分子のしくみ。一体どうなっているんだろうと思って教科書を辿ると必ず行き当たる図です。この一枚にはとても多くの事が盛り込まれていて、きちんと理解するためには読む側の想像力が要求される。またタンパク質の構造や相互作用など新しい研究成果もあり、良書であれば改訂のたびにきちんと内容も更新されるが、残念ながら古いものがそのまま使われてよけいに混乱を招く。今回、分子生物学を勉強中の方から持ち込まれたのは、そのような白黒図版の一枚。図中の走り書きの痕跡から何とか読解したいという気持が滲み出る。間違ってはいないのにわかりにくいのは何故?早速その分析から始まった。
 ・DNA鎖の方向性は? 鋳型鎖と新しい鎖の区別は?
 ・複製はどっちからどっちに進んでいるの?
 ・止め金タンパク質って何? それぞれのタンパク質のはたらきは?
 この3つを意識しながら、DNA複製のモデルとして正しく分かりやすい一枚を整理し直す作業から始まった。そもそも鋳型となるDNAの2本鎖は逆方向で、DNA合成酵素は1方向にしか進めない。それなのにDNA複製装置ではたらくタンパク質は一緒に、同じ方向へ反応が進むのは何故?『生命誌』バックナンバーも熟読、岡崎フラグメントの発見やモデル提唱の経緯から辿る。ラギング鎖の不連続なDNA合成のしくみなど、一枚のモデル図に表わせない時間軸上のしくみをコンテ風に整理して加えてみる。そしてCG「DNAって何?」を見ながらモデルを検証。
 複製にはたらくたくさんのタンパク質のそれぞれの機能も改めて確認、タンパク質の構造や反応部位、DNAに比べてどのくらいの大きさなのか確認、それぞれの特徴を掴んで模式化し、複製装置を構成し直してみると・・・
 ● ポリメラーゼはげんこつの形
 ● ヘリカーゼは某有名ドーナツ形
 ● クランプローダーはナスビ、SSBはコンペイトウ
何故か美味しそうな複製装置の出来上がり!
村田英克(スタッフ)

アフター
DNAヘリカーゼ
DNAの二重鎖をほどく酵素
「間の水素結合を切ってやる」
DNAポリメラーゼ
新しいDNAを合成する酵素
「5’→3’方向にしか進めないよ」
クランプローダー
クランプをDNAに結合させる酵素
「クランプを運ぶんだ」
クランプ
DNAからポリメラーゼが外れるのを防ぐ蛋白質
「離れちゃ合成できないもん」
SSB
一本鎖のDNAを保護する蛋白質
「一本じゃ不安定なのよ」
RNAプライマーゼ
RNAプライマーを作る酵素
「DNA合成のためのタネを作るんだ」
RNAプライマー
DNA合成のタネになるRNA
「僕を目印にDNAを作ってね」

SICPからのコメント
 時間経過や動きを伴う図を読み解く時、動いてくれたらわかりやすいのに…と思うことがありますね。DNA複製チームは、いわばそんな図版表現の限界に挑戦。コマ送りの図で工夫し、細部の解説を別枠に作ることによって、見比べながら解読するのもなんだか楽しげな図ができたと思います。未だ解明されていない部分もある「モデル図」であるため、理解するだけでなく推察力想像力も駆使しての作業となり、一時は大変難しい議論に突入している様子も見受けられました。また、まずは興味を持って見てもらいたい、それから是非その内容に感動してもらいたいという想いを込めての、お菓子みたいな作図も大変良かったと思います。
北地直子(スタッフ)

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