研究員レクチャー

JT生命誌研究館の研究員が月に1回づつ、現在おこなっている研究について話します。
【入場無料・予約不要】

研究員レクチャー2012年度

第9回

日時
2013年2月16日(土)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
佐々木 瑞希 研究員(ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ)
タイトル
細胞の接着構造にみられる多様性と進化
内容

カドヘリンは細胞と細胞を接着する働きをもつ分子で、これまで多くの多細胞動物で同定されてきました。この分子は細胞膜を貫通し、細胞の外に接着機能をもつ構造が突出していますが、この細胞外の構造が系統によって異なることが分かっています。祖先的な動物では繰り返し構造が多いのですが、進化していくにつれ、短い分子になってきたと考えられます。

細胞間接着分子が短くなることで、細胞の動態や体の構造はどのように変化したのでしょうか。私たちは祖先的なカドヘリン分子(DN-cadherin)と、進化的なカドヘリン分子(DE-cadherin)の2種類をもつショウジョウバエをモデルとして、カドヘリンの短縮化と進化の関係ついて研究しています。今回はこれまでの研究成果について紹介し、皆さんと楽しくおしゃべりしながら生物の多様性と進化について考えたいと思います。

第8回

日時
2013年1月19日(土)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
橋本主税 研究員(カエルとイモリのかたち作りを探るラボ)
タイトル
両生類での原腸形成の新しい見方
内容
両生類の原腸形成過程の研究はもう一世紀にも渡って続いており、近年では分子生物学の知見の集積により、過去の実験発生学の諸問題が遺伝子レベルで解明されてきている。その発展に最も大きく貢献したのはツメガエルと分子生物学の相性の良さであろう。すなわち、イモリなどの発生現象をツメガエルの分子生物学によって解明してきたという図式がなりたつ。その前提には少なくとも両生類の発生過程は基本的に共通であるという認識が存在し、だからこそ、その実験に最も適している動物で解析した結果を統合して共通理解とするわけである。しかし、発生過程を丁寧に見てみると、どうも昔から教科書に書かれているような形態形成運動がツメガエルでは起きていないように見えることがある。ではツメガエルの形態形成運動は実際にはどのように進むのか?それは他の両生類種と質的に異なるのか?あるいはやはり共通な機構でなされているのか?という疑問が生じてくる。本セミナーでは、ツメガエルとアカハライモリを比較し、その原腸形成運動が互いにどう似ておりどう異なっているのかについての研究結果を紹介する。遺伝子や分子の難しい話はいっさい出てこない。ぜひ皆さまからの新鮮なコメントをたくさんいただけることを期待する。

第7回

日時
2012年12月8日(日)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
西原あきは研究員(カエルとイモリのかたち作りを探るラボ)
タイトル
神経堤の形成
内容
「神経堤」という細胞をご存知ですか?おそらく多くの方に馴染みのないこの細胞ですが、実はわたしたち脊椎動物が脊椎動物らしいかたちを作るのに不可欠な細胞です。神経堤はまず、神経と表皮の境界に形成されます。その後体内を広範囲に移動し、末梢神経や色素細胞など場所に応じて様々な細胞種へと変化します。脊椎動物を特徴的づけている頭部骨格も大部分はこの神経堤細胞から作られます。神経堤は脊椎動物の進化の初期に現れたと考えられており、脊椎動物以外では見出されていません。我々の研究室では、神経堤が形成される仕組みを理解することで、脊椎動物が進化の過程でどのように生じたかを知る手がかりが得られるのではないかと考えています。
今回のレクチャーでは、神経堤の形成について我々の研究成果をご紹介しながら、脊椎動物のかたちがどのようにできあがるのかについて一緒に考えてみたいと思います。


移動中の神経堤細胞を染色したツメガエル胚

第6回

日時
2012年11月18日(日)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
秋山-小田康子研究員(ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ)
タイトル
オオヒメグモって、どんな生き物?
内容
わたしたちの研究室では、オオヒメグモを新しい実験材料として開発し、卵の中に形やパターンがどのようにつくられるのかを研究しています。オオヒメグモとはどのような生き物なのでしょうか?
 今回のレクチャーでは、発生学の研究対象としての、動物進化を考える上での、またゲノム科学的側面からのオオヒメグモの魅力を紹介します。わたしたちの研究結果とこの分野の世界的な情勢も合わせてお話します。


オオヒメグモの幼生

第5回

日時
2012年11月17日(土)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
岡本朋子研究員(DNAから進化を探るラボ)
タイトル
イチジク属植物とイチジクコバチの共種分化はどのようにして起こるのか?
内容
イチジクとイチジクコバチは互いに繁殖を依存しあった、1種対1種の関係にあります。このような密接な関係を持つ多くの生き物では、種分化が同調して起こる“共種分化”によって多様化してきたことが知られています。特に、個体群が地理的に分断されることで種分化が起こる異所的種分化が、共種分化のパターンを生み出す1つの要因であると考えられています。
 これまでに、イチジクは種に独特な花の匂いを放出して特定の1種のイチジクコバチを誘引することが知られてきました。本研究では、このような花の匂いに注目し、地理的に離れた個体の間でどの程度匂いが異なるのか?その匂いの違いは遠くはなれた植物同士が遺伝的に交流出来なくなったことでうまれたのか?について検証しました。台湾、石垣島、沖縄島のオオバイヌビワとオオバイヌビワコバチを例に、これまでの研究成果を紹介します。


オオバイヌビワの花嚢の中で授粉するオオバイヌビワコバチ

第4回

日時
2012年9月15日(土)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
龍田勝輔 研究員 (チョウが食草を見分けるしくみを探るラボ)
タイトル
産卵のための味覚受容のしくみをチョウと他昆虫で比較する
内容
アゲハチョウ科昆虫の多くは数種類の植物の葉を食べる狭食性昆虫です。ですから、寄主植物(食べる植物)を正確に選ぶ必要があります。寄主植物の選択は産卵行動時に行われており、メス親は寄主植物の葉に含まれる2〜10種類の産卵刺激物質(味物質)を手がかりに、彼女たちが出会う多くの植物の中から正確に寄主植物を選択していると考えられています。
 本研究では電気生理学という手法を用いて、ナミアゲハの産卵刺激物質の受容メカニズムの解明を目指してきました。これまでの結果から、ナミアゲハが他種昆虫とは異なる味覚受容システムを用いて産卵行動をコントロールしていることがわかってきました。今回のレクチャーでは、ナミアゲハの味覚受容システムと他の昆虫との比較について、同じアゲハチョウ科昆虫との共通点や、他の昆虫との相違点について紹介します。


ナミアゲハの産卵行動

第3回

日時
2012年6月16日(土)14:00〜
場所
JT生命誌研究館
講師
小田 広樹 研究員 (ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ)
タイトル
繰り返しパターンを生み出す動物の多様な戦略
内容
動物のからだには繰り返し構造が見られる。脊椎動物の脊椎や昆虫のからだの節(体節)などはその代表例である。それぞれの動物種は、繰り返し構造を様々に修飾して、例えば、触覚や脚、翅、骨格、尾などの形態的特徴を備えた機能性の高いシステムを構築している。生物進化では、生存競争に有利な機能性の高いシステムがひとたび獲得されると、安定的に維持される傾向にある。実際に、からだの軸に沿った繰り返しパターンの形成は、脊椎動物や節足動物のグループでしっかりと保守されている。
 しかし、形態が保守されながらも、その形態(繰り返しパターン)を生み出すための仕組みは大きく多様化してきたようである。私たちの最近のオオヒメグモの研究では、少なくとも3種類の異なった仕組みが存在していることが分かってきた。私たちは、繰り返し縞パターンの形成を一つのモデルケースとして、生物の多様化を支配する原理を探究したいと考えている。今回のレクチャーでは、このテーマに関する私たちの研究の最新情報を紹介したい。

第2回

日時
2012年5月19日(土) 14:00~
場所
JT生命誌研究館
講師
尾崎 克久 研究員 (チョウが草食を見分けるしくみを探るラボ)
タイトル
昆虫ゲノムからみた化学受容体研究の現状
内容
昆虫の味覚や嗅覚といった化合物の認識には、脊椎動物と同様に7回膜貫通型の受容体が働いている。昆虫の化学受容体遺伝子は、タンパク質が7回膜貫通型であるという特徴だけが共通していて、塩基配列やアミノ酸初列は類似性が極端に乏しいことが知られている。そのため、他の生物で見つかった遺伝子を手がかりとして、昆虫の化学受容体遺伝子を新規に探索することは困難である。現在知られている昆虫化学受容体は、ナミアゲハの産卵刺激物質(シネフリン)受容体以外は全て、全ゲノムが解読された昆虫に限りコンピューターを使って解析・発見されている。
 近年、ゲノムを解読する技術は驚異的な速度で発展しており、期間も費用も大幅に抑えられている。爆発的に増えているゲノム情報の中から、昆虫の化学受容体に注目して最先端の研究の現状について紹介する。

第1回

日時
2012年4月14日(土)14:00~
場所
JT生命誌研究館
講師
蘇 智慧 研究員 (DNAから進化を探るラボ)
タイトル
イチジク属植物とイチジクコバチの種分化を考える
内容
イチジク属植物は熱帯地域を中心に約 750 種が分布している。日本はその分布域の北限にあたり、南西諸島を中心に16種が生息している。イチジク属植物はイチジクコバチにのみ送粉され、両者の間に「1種対1種」という極めて種特異性の高い相利共生関係が築かれている。このような「1種対1種」共生関係が維持されながら、両者はどうやって種分化し、多様化してきたのだろうか。最近の研究結果を紹介しながら、イチジク属植物とイチジクコバチの種分化の要因を考えてみたい。

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