研究員レクチャー
研究員レクチャー
JT生命誌研究館の研究員が月に1回づつ、現在おこなっている研究について話します。
【入場無料・予約不要】

研究員レクチャー2008年度
  第1回
 日  時 : 2008年4月19日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 蘇 智慧 研究員
(DNAから共進化を探るラボ)GO!
 タイトル : イチジク属植物とイチジクコバチの共生関係と共進化の厳密性を考える
 内  容 :  昆虫と植物との共生関係の中で、イチジク属とその送粉コバチとの関係はもっとも厳密的で、もっとも種特異性の高いものである。1種のイチジク植物にただ1種のコバチが送粉している「1種対1種」と言われている。
 「1種対1種」の関係はどうやって維持されているのだろうか? 広い分布域をもつイチジク属植物の種に送粉しているイチジクコバチは本当に同一種なのか? イチジクコバチが宿主を乗り換えることができるだろうか? そのために、どんなことを乗り越える必要があるだろうか? 最近の研究結果を紹介しながら、これらの問題を考えてみたい。

  第2回
 日  時 : 2008年6月14日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 尾崎克久 研究員
(昆虫と植物の共進化ラボ)GO!
 タイトル : 昆虫と植物を結ぶ絆はなにか 〜食草選択のしくみを探る〜
 内  容 :  アゲハチョウの仲間は、幼虫が特定の植物しか食べないので、母親であるメス成虫がどの植物を産卵場所として選択するかが次世代の生存を左右します。メス成虫は、産卵の直前に植物の葉を前脚でたたく「ドラミング」と呼ばれる行動により植物種を識別しますが、識別の手がかりは植物に含まれている化合物の組み合わせです。前脚ではたらいている化合物の受容に関わる遺伝子群を見つけることができれば、昆虫と植物の関わり合いについてより深く理解することができるだろうと考えています。これまでの研究で見つかった、産卵刺激物質の受容に関わる遺伝子群の解析によって、昆虫と植物を結びつけているしくみについて明らかにできたことをお話しします。

実験室内で産卵中のキアゲハ
「実験室内で産卵中のキアゲハ(奨励研究員の机上)」
  第3回
 日  時 : 2008年7月19日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 小田広樹 研究員
(ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ)GO!
 タイトル : ヒトと昆虫の細胞のひっつき方の違いを実験で調べる
 内  容 :  多細胞動物は、細胞が互いにひっつくために必要な分子を獲得して誕生したと考えられていますが、現在のいろいろな動物を比較すると、細胞がひっつくようになってからもそのひっつき方を大胆に変化させてきたことをうかがい知ることができます。細胞のひっつき方が変われば、細胞の性質や能力にも変化が生じ、動物の体の形にも影響が及んだのではないか? こんな仮説を、私たちは考えています。この仮説を検証するために、キイロショウジョウバエを使って実験を行っています。本レクチャーでは、この私たちの取り組みを紹介します。

生きたショウジョウバエ胚で可視化した細胞をつなぐ構造
生きたショウジョウバエ胚で可視化した細胞をつなぐ構造 (by Haruta)
  第4回
 日  時 : 2008年9月13日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 中 秀司 研究員
(昆虫と植物の共進化ラボ)GO!
 タイトル : アゲハ以外の蝶を飼ってみよう
 内  容 :  研究内容の紹介と共にアゲハチョウの産卵実験を行う実験室見学ツアーに参加された方々からは必ず「蝶の育て方」の質問をうけます。「育てやすい蝶を教えてほしい」「サナギの中はどうなっているの?」など・・・。そこで、今回のレクチャーでは、蝶と食草(幼虫のエサになる植物)の関係を中心にアゲハチョウを使った私たちの研究成果を紹介しながら、身のまわりの多くの蝶に目を向けて、いろいろな疑問について語り合ってみましょう。高槻にはどんな蝶がいるのか、アゲハチョウ以外の蝶を飼うにはどうすればよいか、どんな蝶が育てやすいかなど。天候が良ければ、Ω食草園の見学も予定しています。研究の話を聞くのは初めてでも、小学生以下のお子様連れも、学校の先生も、蝶の飼い方に興味のある方は、ぜひご参加ください。

ハギのつぼみに産卵中のルリシジミ♀。 食草園に飛んできたジャコウアゲハ♀。
ハギのつぼみに産卵中のルリシジミ♀。 食草園に飛んできたジャコウアゲハ♀。
  第5回
 日  時 : 2008年10月18日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 秋山-小田康子 研究員
(ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ)GO!
 タイトル : 動物のからだの軸はどのようにできるのか
 内  容 :  多くの動物は頭-尾、背-腹の直交する2つの軸をもちます。このようなからだの軸はどのようにできるのでしょうか? わたしたちの研究室ではこの問題をオオヒメグモを実験材料に用いて研究しています。クモの卵を見ると、軸をひとつしかもたない放射相称の状態から、2つの軸をもつ状態に変化する様子が良く分かります。最近のわたしたちの研究で、この変化に重要な働きをする遺伝子が分かってきました。今回は、クモの研究内容を紹介します。さらに、進化の過程でクラゲやイソギンチャクのように軸をひとつしかもたない動物から2つの軸をもつ動物が誕生したという考えと、どのように結びついてくるのかを、考察したいと思います。

水族館のイソギンチャク
水族館のイソギンチャク
  第6回
 日  時 : 2008年12月13日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 吉田昭広 研究員
(チョウのハネの形づくりラボ)GO!
 タイトル : チョウのハネの鱗粉 ―細胞分化・機能・普遍性―
 内  容 : チョウのハネは鱗粉でおおわれています。1つ1つの鱗粉は、じつは花びらのような形をした1個の細胞です。この鱗粉細胞はどのようにして生まれ(=細胞分化)、どのようなはたらき(=機能)をもつようになるのでしょうか?鱗粉細胞と同じような細胞がヒトにもある(=普遍性)のでしょうか?鱗粉細胞が提起するさまざまな問題を、モンシロチョウを例にして紹介します。
  第7回
 日  時 : 2009年1月17日(土)14:00〜15:30
 場  所 : 1Fコンファレンスルームにて
 講  師 : 橋本主税 研究員
(脳の形はどうやってできるのかラボ)GO!
 タイトル : 頭が先か尻尾が先か・・・?
 内  容 :  両生類に限ることなく、背骨を持つ仲間(脊椎動物)の体づくりの過程は非常に異なるにもかかわらず、そこに働く遺伝子は互いに共通であろうと言われています。細胞や組織は全く異なる動きをし、また発生にかかる時間も胚の大きさも全く異なる生きものの形づくりに、種を越えて共通の遺伝子が働いている不思議はいまだ解明されておりません。
 カエルやイモリは共に両生類の仲間ですから、もちろん脊椎動物の仲間でもあります。両者を比べると、成体の構造を見ても似たところがたくさんありますが、卵から形が出来上がる過程は特によく似ていて、原則的には同一の機構によると考えられています。同一の機構とは、細胞の動きや胚の形にとどまらず、ひとつひとつの現象に関わる遺伝子までもが共通の働きをしていることを意味します。しかし私たちの研究から、かたち作りの最も重要な過程が互いに大きく異なっていることが見えて来ました。この発見から、カエルとイモリを詳細に比較することによって、脊椎動物全体に潜在するかたち作りの仕組みに迫ることができないかと考えています。
 今回のセミナーでは、カエルとイモリの違いと共通点についてご紹介し、そこからどのような可能性が広がるのかについてお話しさせて頂きます。

なお、今回は哲学の話は致しませんのでご注意ください!!
ラボで飼育しているアカハライモリ
  第8回
 日  時 : 2009年3月14日(土)14:00〜15:30
 場  所 : JT生命誌研究館 1階カンファレンスルームにて
 講  師 : 楠見淳子 研究員
(DNAから共進化を探るラボ)GO!
 タイトル : 生物どうしの関わりと「種分化」
 内  容 :  種分化のメカニズム、つまり、新しい「種」がどんなプロセスで形成されるのか?という問いに関して、ダーウィン以来、多くの論議が重ねられてきました。最近では、分子生物学の進展とともに、この分野でも分子レベルの研究が報告されるようになり、あらためて種分化の問題が注目されるようになってきています。厳密にいうと、生物学的な意味での「種」とは、お互いに生殖可能な(継続して子孫を残していくことのできる)生物のまとまりのことを意味しますので、ここでの「種分化」とは、本来生殖可能な一つのまとまりだったものが、何らかの原因で、互いに生殖不可能な複数のまとまりに進化すること意味します。この何らか原因を明らかにすることが、種分化研究の大きな目標のひとつと言えるでしょう。
 イチジク属植物とイチジクコバチ類は、密接な共生関係を持っており、それぞれの進化が相互に影響しながら進行してきた(共進化)と考えられています。また、共通して種多様性に富んでいることも大きな特徴で(イチジク属植物は約750種、イチジクコバチ類は約300種が知られています)、種分化を考える上でも興味深い対象です。生物どうしの相互作用の進化が種分化にどのように関わっているのか? それは種分化の原因となりうるのか?という疑問を解く鍵を握っているのではないかと考え、研究を進めています。
 本レクチャーでは、イチジク属植物とイチジクコバチ類の種分化メカニズムの解明に向けた最近の取り組みについてお話します。

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