BRH公開セミナー2008年度の報告

タイトル
「発生進化への数理モデルアプローチ ~節足動物の体節形成を例にして~」
日時
2009年2月25日
場所
JT生命誌研究館
講演者
藤本仰一(大阪大学理学研究科)
内容

生き物の発生過程は、多数の分子がネットワークを成して制御されています。ゲノム上の変異の蓄積はネットワークに構造変化を促し、発生過程を進化的に多様化させたと考えられます。分子レベルの機能理解と協同して、ネットワークレベルの機能を理解する手法の確立が求められており、数理モデルという眼鏡が何を映し出してくれるかをお話しします。
●詳細は、季刊「生命誌」61号CROSS「体節パターンを数理モデルで解く」

タイトル
合同セミナー「知識を統合するユニークな試み」
日時
2009年2月3日
場所
JT生命誌研究館
プログラム
1.「はじめに ~なぜいまデータベースを作る必要があるのか~」
講演者:高木利久(東京大学大学院新領域創成科学研究科情報生命科学専攻)
2.「解剖学的特性に基づく遺伝子産物の役割の多様性を認識する試み」
講演者:坂東明日佳 (SICPセクター)
内容

生命科学の知識量が膨大になるにつれて、機械的に利用可能で且つ人間にも理解しやすい知識の形式的表現の重要性が認識されている(例:Gene Ontology, KEGG)。近年特に、医学をはじめとする多くの専門領域では、特定の器官や発生段階など生物種 (グループ) 特有の生体内環境に立脚した遺伝産物の詳細な解析に関心が向けられ、個々の遺伝子が生物種個体の一生の間にどれほど多様な生理的現象に寄与するのかその全貌を捉えることがますます難しくなっている。

本研究では、特定の遺伝子を切り口に最新のレビュー論文を収集し、解析対象となった器官・細胞ごとに知見を分析することで、解剖学的観点からみた遺伝子産物の多様な働きの理解に向けた形式的表現を行う上での課題を検証してきた。具体的には、脊椎動物の広範な器官を対象に分子生物学的解析が行われてきた遺伝子ファミリーとしてカドヘリンを選択した。このファミリーに属す遺伝子をトピックとする2005年から2007年までに掲載されたレビュー論文105報を収集し、各論文から遺伝子の解析成果に関する言及を含む箇所を文章単位で抽出し、調査対象とした。その結果、遺伝子名、細胞及び器官の名称又はそれらの意味を潜在的に含む単語(例:synaptic junctions)を含む文章を178件抽出した。さらにそのような文章のうち、器官特有の現象及び細胞内の分子の挙動の記述を含むものが全体の半数を占めていた。これらの情報を文章から抽出し遺伝子ごとに再整理することにより、相同遺伝子間において、さらには同一遺伝子であっても、器官によってそれらの生物学的役割が異なるという、遺伝子産物の生体内における働きの多様性を把握することが可能となる。このような解剖学的特性に基づいた遺伝子解析の知見の体系的整理とその可視化は、分野間の知識共有を促進すると同時に、生物種個体におけるタンパク質の働きの多様性の認識のために重要であると考えている。

セミナーでは、本研究で行った研究知見の整理方法を説明するとともに、そこから浮き彫りにすることが可能な知識とその限界について議論したい。

プログラム
3.「形態と分子の進化を統合する「進化データベース」の構築」
講演者:星山大介(東京大学総括プロジェクト機構学術統合化プロジェクト)
内容

生命科学の情報・知識が爆発的に増大し、その全体像を把握することが困難になるなかで、知識を的確に位置づける・結びつけることが求められている。本プロジェクトでは、生物進化を中心としたデータベースを構築することで、組織・器官といったマクロレベルの知識と遺伝子、タンパク質といったミクロレベルの知識を統合することを目指した。進化を中心に考えることで異なる生物間の知見を、その由来・歴史を反映した形で自然に結びつけられることから、進化は統合化のための基盤として適していると考えられる。

進化のデータベースを作るには難しい問題もある。進化の記述は自然文(日常的に使っている言語による文)が中心で、データベースとして入力するための規格化が困難である。また、進化を理解するには多くの前提知識が必要となる点も問題である。そこで、進化を表す上で重要と考えられる「系統関係」と「解剖学用語」の2つを整理し、オントロジー(体系づけられた言葉の集合)としてまとめた。これらを使って形態と分子を記述することで前述の問題の克服を試みた。

これまでに、アプローチの有用性を示し問題点を認識するための試作データベースを作成している。試作データベースを構築することにより、形態データと分子データを統合できる、従来の書籍などと較べ一覧性が高く、情報の検索や抽出もできる、といった利点があることを確認できた。

セミナーでは実際の試作データベースの操作を実演し、すでに実装されている機能を説明するとともに、今後の計画・展望を述べる。
「進化の総合データベース Matrix of Evolution」

タイトル
合同セミナー「生きもの上陸展に向けて」
日時
2008年11月26日
場所
JT生命誌研究館
内容

動物の多様性の大部分を占める有翅昆虫がどのように進化したのかは生命誌のテーマの一つです。理化学研究所発生再生科学総合研究センターの丹羽尚博士は、環形動物や節足動物の付属肢の起源を解剖学的観点から研究しており、最近はショウジョウバエやカゲロウ、シミなどの付属肢形成遺伝子の発現パターンの比較から、棒状の付属肢(腹毛や脚)からシート状の付属肢(気管鰓や翅)への転換がどのように説明できるかを検討されています。

有翅昆虫の起源を分子系統学的に探る石渡さんの研究報告と、古生代に多くの多細胞生物が上陸したことを総合的に表現する板橋さんの展示企画の紹介もあわせてセミナーを行い、研究と表現をお互いに深める機会をつくることができればと思います。(山岸 敦)

プログラム
1.「生きもの上陸展に向けて」
講演者:板橋涼子(SICPセクター)
季刊「生命誌」60号 from BRH
生きもの上陸大作戦 - 昆虫の起源と進化を明らかにする
2.「分子系統から見た有翅昆虫の起源」
講演者:石渡啓介(DNAから共進化を探るラボ)
3.「翅の誕生 ~昆虫の体にある2つの仕組み~」
講演者:丹羽尚(理化学研究所 発生再生科学総合研究センター)
タイトル
「The evolution of pattern formation: segmentation in animals」
日時
2008年11月19日
場所
JT生命誌研究館
講演者
Michael Akam(ケンブリッジ大学)
紹介

Michael Akam教授は、節足動物のHox及び体節形成の研究に貢献している著名な研究者で、数多くの総説を執筆するなど発生進化の分野のオピニオンリーダー的な存在です。(小田広樹)

タイトル
「イモリ研究はマニュアルの無い実験と失敗の連続! 」
日時
2008年5月27日
場所
JT生命誌研究館
講演者
岡本光正(愛知学院大学)
内容

卒業研究や博士課程前期の人と仕事を始めるときに、私は“イモリの研究は開拓時代のアメリカで鉄道を敷く仕事と同じだと思う”と言ってきました。一人荒野に立つ時、どちらの方向に鉄道の線路を敷設するのがいいか、また途中で地面がぬかるんでいたときどう対処したらいいか、教えてくれる人もいないし、その後、枕木を一本一本敷いていく時の苦労も目に見えています。イモリの研究もそれと同じで、失敗の連続ですし、実験器具も必要なら自作しないと研究は進みません。しかし、なぜかそんな仕事に心が騒ぐという人はいるものなのです。初めて自分が敷いた線路の上を列車が通った時と同じ喜びは、実験でも格別なものがあります。今回、これまでの私の研究のご紹介をしながら、上に述べたことを皆様にも一緒に体験していただけたらうれしいと思っております。

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