ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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冬には冬の楽しみ方を

2018年2月1日

有本 晃一

窓の外を見ると雪が降っています。日本には四季があり、季節性を楽しめることは非常に恵まれた喜ばしいことです。冬には冬の楽しみ方があり、クリスマスにお正月、成人式、節分、バレンタインデーとイベント盛りだくさん。この際だから節操なく中国の春節もイベント化すればいいのではと思ったりします。しかし、それらは文化的なイベントです。昆虫学的に、厳密に言うと、昆虫採集家的に、冬は退屈な季節です。なにせ虫が活動しておりません。イベントが起こりようもない。この季節、昆虫採集家は春から秋にかけて集めた膨大なサンプルの処理にひたすら追われ、「4月まであと○ヶ月か」とため息をもらし、遠い夏に思いを馳せるのです。

反面、研究ははかどります。今、昨年採取したイチジクコバチの新種記載論文を作成中です。そのコバチは体長1.2ミリと非常に小さいです。これまで1ミリの虫を解剖したことはなかったので、解剖できるか心配していたのですが、むしろ簡単だということがわかりました。小型化した虫の体の構造は単純化されており、おもちゃの手足を取り外すかのように簡単にバラすことができます。昆虫の種分類では通常、外骨格を観察するため、筋肉や脂肪、膜質部は解剖や観察の妨げになることが多いのですが、コバチではほとんど気になりません。ただし、構造が単純化しているということは、種間の違いを見つけづらくなっているということであり、形態分類ではネックになります。そこで、コバチを走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影することにしました。SEM画像だと体表面の微細な構造まではっきりとしたコントラストで鮮明に見て取れます。対象が小さいので相性も抜群です。まだ金蒸着や撮影技術は試行錯誤中ですが、十分論文に使えるベレルの写真が撮れるようになってきました。

今冬は記録的な寒さのようです。冬が例年より寒いと、春から夏にかけての季節の進行が遅れます。つまり虫の発生が例年より後にずれてしまい、調査に適した時期を予想することが困難になります。近年は、そんな状況が続いているので「南の国は年中、虫採りができて楽しいだろうなあ」とよくぼやいているのですが、そうすると「じゃあ常夏の東南アジアに引っ越せば」と言われます。しかし、そこは日本人。ケーキを食べ、餅を食べ、恵方巻きを食べ、チョコレートを食べ、冬を文化的に楽しみたいのです。冬には冬の楽しみ方を。


SEMによるアコウコバチの頭部側面の撮影画像

[ DNAから進化を探るラボ 有本 晃一 ]

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