ラボ日記

研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。月二回、スタッフが交替で更新しています。

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クライオ電顕のさらなる進化を期待して

2017年11月1日

小田 広樹

今年のノーベル化学賞は、クライオ電顕(低温電子顕微鏡法、cryo-EM)の技術開発に貢献した3名の研究者に与えると発表がありました。クライオ電顕は、分子構造や細胞の微細構造の解析で最近頻繁に使われるようになった技術で、私自身も自分の研究の関係で非常に関心を高めていた技術です。私は、常温で行う、いわゆる普通の電顕はやったことがあるのですが、"クライオ"は全く経験がありません。研究者としては、クライオ電顕が自分の研究に使えるのか、使えないのかに関心があって、いろいろ論文やネットを調べたり、セミナーに出たりして、その技術について勉強してきました。クライオ電顕では、精製したタンパク質や取り出した小さい組織片を水が結晶化しないように急速凍結して、その凍結したままの状態で観察します。生きた状態にできるだけ近い状態を見ることができるのが一番のメリットです。しかし、弱点もあります。分子構造の観察の場合、すべての分子が同一の構造をとっていて、それを様々な角度から見ていることを前提として、取得した多数の分子像を元に計算で期待される分子構造を再構成するため、構造が必ずしも一定ではない分子の観察には困難があるようです。私たちが今研究しているクラシカルカドヘリンの祖先型分子は巨大で、何か所も折れ曲がった紐のようになっていると考えられるので、クライオ電顕では解析が難しい類の分子と思われます。タンパク質を含む非常に薄い水の膜を作って凍らせるのも神業的技術のようです。組織の観察にも興味がありますが、凍結した組織を凍結したまま切片を作る際に、観察したい領域を観察したい向きで切片に収めることは簡単ではないようです。クライオ電顕の困難な部分を挙げ連ねましたが、この技術は今後確実に進歩します。無脊椎動物のカドヘリンのリアルな構造を明らかにすることを夢見つつ、チャンスを探りたいと思います。

[ ハエとクモ、そしてヒトの祖先を知ろうラボ 小田 広樹 ]

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