ラボ日記
研究セクターのスタッフが、日常で思ったことや実験の現場の様子を紹介します。
月二回、スタッフが交替で更新しています。
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【鉄腕アトム】
 
尾崎克久

 昨年4月から今年3月までの1年間にわたって、「鉄腕アトム」が放映されました。2003年4月7日のアトムの誕生日を記念して、新規に制作された作品でした。放映前は、現在の技術を使った美しい映像のアトムに期待しつつ、手塚治虫のテイストがあるのかという不安も感じていました。実際に放映された作品には、観たことを後悔するくらい「現実の世の中」を感じさせる痛い話もあり、紛れもない手塚治虫の世界が展開されていました。
 物語の主人公・アトムの最大の特徴といえば、ロボットでありながら意思や感情だけでなく、「心」を持っているというところにあります。アトムは色々な経験を通して人々と心を通い合わせて、すばらしい友情を築いていきます。アトムの活躍が一因となって、 AIを持つ全てのロボットに人類と同じ人権を与えることになって、物語が締めくくられました。 これは「ウイルスは生物か否か」という問いとは別の角度から生物と非生物の境界があいまいになってしまうので、個人的には疑問を感じる面もありますが、とても心温まる最終話でした。ハリウッド映画で機械が意志を持つということを題材にすると、人類の存亡をかけた戦いといった内容になりがちですが、鉄腕アトムでは、意思や心を持つ機械は人類にとってかけがえのないパートナーであるという人情味あふれる内容でした。
 一年間の放映の中で、強く印象に残っている場面の一つに、廃棄されたロボットが「長い年月命を紡いできた人間が生み出したロボットは、生命の延長ではないのか?」と嘆いているというものがありました。それに共感する気はありませんが、手に馴染んだ道具や感性に合う自動車に対して、自身と一体化したかのような強い愛着を感じるという気持ちは否定しません。愛着のあるモノを失ったとき、長年一緒に過ごしたペットのような命あるモノを失ったときに似た寂しさを感じます。愛着を持つことができれば、非生命体であっても大切にすることができますし、思いやりを持てなければ命あるものでさえ粗末に扱ってしまうことでしょう。生物かどうかといった理屈を考えるよりも、思いやりの心を持つことが大切なのではないだろうか、などなど、おそらく人類と他の生物を分ける最大の特徴と思われる「心」についてあれこれと考えるきっかけになりました。



[昆虫と植物の共進化ラボ 研究員 尾崎克久]

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