ちょっと一言

館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。

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新しいことに挑戦する若者を

2013年10月1日

中村桂子

知と学びのサミット「個性が育むサイエンス — ノーベル賞受賞者が語る」という中学生・高校生など主として若い人を対象にした会に、益川敏英さんとの対談のお役目で参加しました。益川さんは、具体的な先生と弟子の関係でもないのに、年上だからとか、優れた研究をした人だからとかいう理由で先生と呼ぶものではないとおっしゃるのです。さんと呼び合って自由に語り合うのが研究者だと。なるほどと思いながらも、つい先生をつけてしまいましたが。

それはそれとして、対談のための資料を読んでいるうちにあることに気づきました。益川さんのノーベル賞受賞の対象になった論文は、33才の時に書かれたものです。共同研究者の小林さんは28才。大学院を終えたばかりの若者です。大学生にとってはちょっと上の先輩ですし、高校生だって10年ほどたてばその年齢になります。つまり、益川さんから若者にとって大切なことを受け取ろうとしたら、73才のノーベル賞受賞者のありがたいお話を伺うのではなく、ユニークな研究について懸命に考えている若者の気持ちを引き出し、伝えなければならないと思ったのです。気づいたこととはそれです。そう言えば、生物学で20世紀最大の業績と言われる「DNAの二重らせん構造の発見」をした時のワトソンは、25才でした。お相手のクリックは少し寄り道をしていたこともあり37才でしたが、それでも若いです。

今の研究者世界のあり方は、このような若い人たちが誰も手をつけていない仕事をしやすいようになっているかしら。まったく違うように思えます。ワトソンや益川・小林の時代を「古き佳き時代」と言っていてはいけないでしょう。若い人が本当に新しいことができる状況こそ、よい研究が生まれるための不可欠の条件です。もっと自由な空気と若者の挑戦を支援するシステムを作らなければいけないと思います。

これは研究者の世界に限ったことではありません。あらゆる場面で若者が挑戦できるようにしたいですね。

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