中村桂子のちょっと一言
中村桂子のちょっと一言
館長の中村桂子が、その時思うことを書き込むページです。月二回のペースで、1998年5月から更新を続けています。
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2008.1.18 

【若い力に圧倒される】
 
中村桂子館長
 早いですね。もう半月がたちました。実は、今年は6日までゆっくり休み7日から仕事を始めたので、実質一週間でしたから、そのせいでもあります。ところでこの一週間は、まさに若い力に圧倒される体験の連続でした。
 7日は、前回予告の小学校6年生が来館してくれました。4年生も含めての三人連れ。三重県からですので運転手役のお父さんも一緒でしたが、主体はあくまでも小学生です。生ゴンクラブのメンバーで、中心が6年生の大内君。生ゴンクラブとは、生ゴンと名づけた生ゴミ処理用微生物を用いての生ゴミ処理を実行しているだけでなく、それについて研究した小学生6人のクラブです。この研究を通して地球環境や生命の歴史に興味を持ったので、是非話がしたいということで冬休み最後の日の訪問になったのです。生ゴンの実物を見せてくれましたが、サラサラで匂いもなく、家の中に置いても大丈夫というのも肯けました。クリスマスに食べたチキンの丸焼きの骨もほとんど消えかけており、強力です。開発者の特許なのでしょうか、具体的な微生物はわからない(アースラブと呼ばれています)のですが。生ゴンクラブのやっていることを見ると、理科も家庭科も社会科も国語も(私への手紙よく書けていました)、すべてが入ったまさに総合学習になっています。そのうえ、どうしても家族が巻きこまれますから、家族の話し合いや共同作業がしっかりできます。今は一億総クレーマー時代とやらで、保護者が学校にいろいろな要求をしてくると言われていますが、大内君親子を見ていると、本当によく通じ合っていて、楽しそうで、学校に何でも求めるなんてこれでは起こらないでしょう。科学リテラシーをあげるためにという目的で行なわれる活動に抵抗があるのは、このような自然さがないからなのです。この中から科学を専門にする人が出てもいいし、政治家が出てもいいわけでしょう。むしろ政治家こそとさえ思います。
 ところで、大内君が開口一番、質問があると言うのです。研究館のホームページに「季刊『生命誌』」があるのは御存知だと思います(読んで下さっているととても嬉しいのですが)。その53号に大阪大学の四方哲也教授の研究を紹介しました。粘菌と大腸菌を一緒に培養すると、粘菌が大腸菌を食べるのですが、食べ尽くしてしまったら、元も子もありません。実際にそのようなことにはならず、共生関係が生れるという過程を実験室で見せた興味深い実験です。この研究をホームページの中で見つけて強い関心を持った大内君は、“微生物って頭があるのかなあ、ないんですよね”と迷っているのです。粘菌の賢さに驚き、頭で考えているみたいと思ったのでしょう。その気持わかります。ちゃんと節度を守って生き続けられるようにしている粘菌に感心しますもの。どうやってそのような“判断”をするのか。それが四方教授のテーマであり、私たちも知りたいところです。そこで、“頭があるみたい”と思う気持ちわかります。私たちの頭より微生物の方が賢い“判断”をしていると思うこともありますから。
 小学6年生にはこれは難しかろうとか、子どもにはわかりやすくとか言いますが、最先端の研究紹介だってとびついて考えるんです。そして質問が生れる。その時は真剣に答えなければいけません。私も微生物が環境をどうやって知るかを話しました。研究館はそういう人のために創ったので、このような場面に出会うと本当に嬉しくなります。一人でも二人でもそういう子どもがいてくれれば研究館の意味はあると思っています。実際には、よく考え、夢を語ってくれる子どもたちは少なくありません。大内君たちとの楽しい時間で明けた週の週末には、大勢の小・中・高校生に圧倒される体験をするのですが、それは次回に。
 成人の日のニュースに、未来は暗いと答えた若者が47%、明るいと答えたのは9%とありました。この数字の意味は充分考えなければいけませんが、明るいタネを育てることが大事だと思うのです。


 【中村桂子】


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