中村桂子のちょっと一言

館長の中村桂子がその時思うことを書き込みます。月二回のペースで、1995年5月から更新を続けています。

2017年4月17日

生命誌の10日間

中村桂子

この10日間ほどを振り返り、生命誌って面白いなと改めて思っています。

 

まず、京都で開かれた仏教のある宗派の全国大会でお話をするところから始まります。「生命誌絵巻」も「生命誌マンダラ」も仏教と重なりますし、お釈迦様はDNAなど御存知なくとも生命誌の本質を理解していらしたと思える方です。でも仏教にも歴史がありますので、その宗派の考えは知っておかなければなりません。ちょっと勉強です。

 

次の日は日本科学未来館で、これからの科学技術のありようを考えました「sustainability」に関する国際会議を開催するとのことで、何をsustainするのか、それを明確にしなければいけないとお願いしました。今の価値観そのままに今の社会を継続しようというのはちょっと違いますから。

 

週が明けて、国立近代美術館で十五代楽吉左衛門さんとの対談です。450年続いた楽家のすべてを見せて下さる展覧会もみごとなら、楽さんもすてきです。お話も楽しかったのですが、楽家についての予めのお勉強がとても楽しく、たくさんのことを考えさせられました。

 

次の日が国際高等研での「AI(人工知能)」の勉強会です。専門でない人の意見を聞きたいと言われても何もわからないではどうにもなりません。最近送られてきた本を調べたら、10冊ものAI関係の本がありました。流行なのですね。びっくりしたのが、将棋をするAIは、実際は何をやっているのかわからないのだけれど勝つからよいでしょうということだという話。科学はわからないでよいけれど、技術はわかっていることをやるものと思っていたので・・・そんなことで大丈夫ですかというのが実感です。でもその能力を生かして、ゲノム解析で出ているビッグデータを処理し、ゲノムとは何かを解いてくれるとありがたいです。どうもこういうことはあまり得意ではないようなのですが。

 

そして昨日は超弦理論の大栗博司先生です。究極理論を求める科学を映像化した「9次元から来た男」を未来館で見て、頭がクルクルしていましたのでどうなることかと思っていましたら、「今ここにいることを示す情報は三次元ですよね。もっているお財布にいくら入っているかという情報を加えれば4次元でしょ」と言われて、「えっ」でした。「それなら私9次元どころじゃない」ですよね。本当かなと思いながら多次元が身近になったことは確かです。宇宙が統一的に説明できたらとてもスッキリするでしょうから、ヒモに大いに期待します。でもお話し合いから、生きものは違う立ち位置で考えなければいけないと思えてきて、それを探さなければいけないことになりました。生きものは面倒です。でも面白い。

 

こんな日常を書いたのは、生命誌の本質と実態を伝えたかったからです。仏教、科学技術、焼きもの、人工知能、超弦理論。一つ一つをていねいに説明できませんが、これらの底にある共通なものを探してそれをつなぐことができるのが生命誌であり、それによって総合的な、別の言葉を使うなら日常的な知が生れると思っているのです。

みなさんからのご意見生命誌の広場より

岡田節人著<試験管のなかの生命>

投稿日:2017.02.07 / 名前:岡野桂子

岡田先生へ
訃報に接し”試験管のなかの生命”を手に取りました。最初に読んだのは40年程前になります。以来ずっと記憶に刻み込まれ残っていました。今回、館長の一言で気付いた事があります。私をひきつけていた1つの大きな要因。細胞の不思議に目を見張り、その細胞を見つめ続けてこられた岡田先生の細胞へのひいては生きものへの眼差し。それが伝わってきて私を捉えていたのです。
この本から多くのことを学びました。細胞を通して生きるを見つめる視点。1つの細胞からその場、その場面に応じて最適解を探りながら、多種多様な姿形への変容を遂げる細胞たち。そして作り上げられる1つの個体。一方、1つの個体の中で役割を演じつつもその個体を離れては生きていけない宿命を担うことになる細胞。部分と全体が反転を繰り返す。秩序と体制、自由、協調、軋轢、そして技術の介入etc。いろんなことを考えさせられます。
いつかまたこの本を手にすることと思います。この本を書き残してくださったことに感謝いたします。ありがとうございました。

語り合いの続きは「生命誌の広場」へ

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