2011年遊ぶ
図1:キンカチョウのさえずり学習
キンカチョウは孵化後約20日から成鳥の歌を聞き覚え(感覚学習)、約30日ころから自らさえずって歌を練習する(感覚運動学習)。2つの学習期間を経て、成鳥の歌を習得する。
註1:鳴禽類
スズメ目スズメ亜目のさえずる鳥の総称。スズメ、ヒバリ、ウグイス、カラスも鳴禽類に属する。英語ではソングバード。
図2:ソングバードのソングシステムの神経回路
発声回路は、NIf、HVC、RA、DMを経て舌下神経につながり、そこから発声器官である鳴管に情報を伝える。学習回路は、HVCからX野、DLM、LMANを迂回しRAに至る。
註2:収斂進化
祖先となる生物がもっていない形質や機能を、別々な生物がそれぞれ同じように作り出すこと。例えば、鳥とコウモリの羽、魚と鯨の体型などがある。
註3:神経核
脳などの中枢神経系で、特定の情報の伝達を担う神経の経路(回路)の中継点や分岐点にある神経細胞の集合体(神経細胞群)。
図3:成鳥がさえずる時に脳に誘導される遺伝子の例
白くみえるところが、メッセンジャーRNAが発現している場所。黙っているときよりも、さえずっているときにソングシステムで遺伝子が活性化される傾向が見られる。さえずり時の写真内の数字は、さえずり始めてからの時間。
Wada, K. et al. PNAS vol.103(41), 15212-15217 (2006).
図4:さえずり行動で脳内に誘導される遺伝子の発現量の変化
さえずり行動によって発現誘導される33個の遺伝子のすべてがこの6タイプのいずれかに分類できることがわかった。中でもタイプIVの遺伝子が多く見られた。
Wada, K. et al. PNAS vol.103(41), 15212-15217 (2006).
図5:若鳥と成鳥で発声行動による発現誘導が変わる2つの遺伝子の例
サブソングからプラスティックソング初期にあたる学習適応期中の若鳥が30分さえずったときと、学習を終えた成鳥が同じく30分さえずったときでは、ソングシステムの神経核で発現が大きく変わる遺伝子がある。
和多 和宏 (わだ・かずひろ)
2003年東京医科歯科大学大学院修了(医学博士)。米国デューク大学医療センター神経生物部門リサーチアソシエイト、北海道大学大学院先端生命科学研究院准教授を経て、2011年より同大学理学研究院准教授。