しっぽの生命誌❶
サルの仲間
カニクイザル
イヌがしっぽを元気に振る様子や、セキレイが長い尾を上げ下げするのを見ると、しっぽが心を表しているようで、私たちにもしっぽがあればとうらやましい気持ちになりませんか。おまけのようにも思えるしっぽですが、実は、生きものの多様な暮らしをとてもよく表しています。しっぽのある生きものをつくり、端っこに宿る知恵を身近に飾りましょう。
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写真提供:香田啓貴
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出典:
Gumert M.D. and Malaivijitnond S.
Am J Phys Anthropol 149:447 (2012)
Yao L. et al.
Mol Phylogenet Evol 116:227(2017)
哺乳類のしっぽに注目すると、サルの仲間のしっぽは実にさまざまです。ヒトを含むしっぽをもたない類人猿とオナガザルの仲間は、ともに旧世界ザルに分類され、オナガザルには、その名のとおり長いしっぽをもつもの、中くらいのしっぽのものや短いしっぽのニホンザルもいます。
カニクイザルは、オナガザルの仲間で、英語の名前は「長いしっぽのマカクサル」(long-tailed macaque)。体長よりも長いしっぽは、樹上で枝から枝へと飛び移るときや四足で歩くときにバランスをとるのに使います。東南アジアの広い地域に見られ、森林から市街までさまざまな環境に暮らしています。
カニクイザルという名ですが、どちらかといえば植物食で、人里ではゴミ箱も漁る雑食性です。海辺では石を道具にして貝を割る動作が観察され、カニを含めて海の生きものも上手に食べることができます。
アフリカを出発した最初のホモ・サピエンスは、ユーラシアの海沿いを進んだという足取りがわかっており、ヒトもカニクイザルとともに海の恵みをとおして豊かな生き方を学んだかもしれません。できあがったカニクイザルを手に乗せて、しっぽでバランスをとる感覚を味わってみてはいかがでしょうか。