季刊「生命誌」100〜101号の内容を1冊の本にまとめました。
はじめに
「生命誌研究館」というどこにもない新しい場を創り、そこからの発信の一つとして『季刊生命誌』の刊行をきめました。毎号、その時の思いを込めて時に悩みながら、でもいつも楽しくつくり続けてきました。
昨年ふと気づいたら、100号になっていました。100という数字はやはり特別です。これまで創立五周年を初めとして10周年、20周年には、それまでの活動をまとめこれからを考える記念事業を行ってきました。そこで25周年は季刊誌に眼を向けて、これまでを踏まえた100号、これからを考える101号をつくることにしました。私たちにとっての特別の号であり、お読み下さる方もその気持ちを共有して下さるに違いないと思ったのです。
テーマはすぐ決まりました。「わたしの今いるところ、そしてこれから」。四半世紀の間に生命科学研究は大きく変わり、当初、モデル生物以外の生きものを研究したり、生きものは歴史と関係の中にいると考えるなどとんでもないこととされていた研究のありようは大きく変わりました。生命誌研究館と同じような研究が大学や国の研究所でも行われるようになってきたのです。でも生きものを見る眼は本当に変わったでしょうか。
人間は生きものであり、まだよくわからない生きものという存在の本質を知らない限り、本当の生き方は見えて来ないのだという謙虚な探究心で研究が行われているでしょうか。今こそ生命誌を考え続けた「私」の「今いるところ」を真剣に考えなければなりません。生きているって少し変てこで、面倒で、でもやはり魅力がある。そう思いながらこれからを考えていきたいという気持ちを100号と101号にこめました。この気持ちをみごとに共有して下さる金子邦彦、倉谷滋、酒井邦嘉さんがすばらしい考え方を示して下さいました。どのお考えも不安定なところに新しい芽を生み出しており刺激的です。研究紹介と研究館の各グループの報告にも同じ兆しが見えます。
生きものの本質を見つめ、生きる意味を求めて歩む道は生命誌の先にあることは確かだと思いながら今年の年刊号を送り出します。ご一緒に考えて頂きたいとの願いをこめて。
中村桂子
付録について
表紙に生命誌マンダラをあしらった生命誌のポップアップ年表。138億年という時間の中で生まれてきた宇宙・地球・生命・人間についての科学を踏まえ、その中の「わたし」はどう生きるのか。ポップアップを開きながら考えるお仲間になって下さい。
ご購入方法
館内のグッズコーナーでお求めになれます。
掲載記事
年間テーマをWEBで読むことができます。