季刊「生命誌」37〜40号の内容を1冊の本にまとめました。
はじめに
愛づる心が生まれるには、じっくりと時間をかけることが必要です。実は、生きるとは時間を紡ぐことそのものですが、効率をよしとする現代社会は、ゆっくりと流れる時を嫌います。生きものの持つ「時」を見つめよう。まずはそれが基本です。
「愛づる」と「時」。生命誌研究館の10周年にあたって、これまでの10年をまとめ、次の10年を見通す鍵になる言葉です。生命誌は、特定の学問というより、誰もが日常の中で生きものを愛し、生きることを大切にする気持ちを支える「知」として組み立てていきたいと思っています。幸い、この1年間、「愛づる」という言葉を通して、多くの方が、日常から、またそれぞれの方の専門を踏まえて、生命誌への共感を示して下さいました。
科学、哲学、美術、文学、歴史、東洋、西洋…これらをつなぐというより、いずれも「愛づる」から生まれてくるものでつながっていると思いました。「愛づる」と「時」を基本に考えてきたこの1年間の活動は、季刊BRHカードと生命誌ジャーナル(HP)でお届けしてきましたが、1冊にまとめて読み通し、あなたの「愛づる」を考えていただきたいと思います。
中村桂子
掲載記事
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