欧米を中心に教育・演奏両面で国際的な活躍を続けるヴァイオリニスト森悠子氏を音楽監督とする長岡京室内アンサンブルをお迎えして、生命誌研究館ならではの、一流の音の響きを来場者の方々に楽しんで頂きました。本作はその記録映像です。演奏会のタイトルにある「節人(ときんど)先生」とは、もちろん当館初代館長の岡田節人先生のこと。「科学を演奏する」生命誌研究館の活動を礎を築き、2017年1月17日に逝去された節人先生へ、今も当館に流れ続けているこのフレーバーを「いのちの響き」としてお届けしたいとの思いから演奏会は開催されました。
演奏会のモチーフは「生命誌マンダラ」です。始まりは一つの細胞、受精卵から発生が進む生きものの体は、細胞社会として一つの秩序(個体)を生きてゆきます。そのディベロップ(発生・展開)の過程を、森悠子が選曲と演奏で表現。冒頭、ビーバーのパッサカリア ト長調は、石上真由子によるヴァイオリン・ソロ。五度調整の古典的な宗教音楽に、会場から「音の透明度が素晴らしかった。岡田先生への祈りのように感じました」との声も。
2曲目モーツァルト(2つのヴァイオリンのための12の二重奏曲 op.70-1 より第1楽章 Allegro moderato)に続き森と中村のトーク。前日リハーサルにも立ち会った中村が、このホールで最もよい音の響きを生み出すポジションを瞬時に探り当てた森への驚きを伝えると「エクテ ! 」と、フランスで体で学んだ音を聴くことの大切さを語り、「マンダラ」から着想した選曲へと話題は進みます。途中、節人先生が好きだった「愛の挨拶」への言及から、即興演奏で石上もトークに参加。ラヴェルの紹介では、音楽も印象派は点描ですと、ヴァイオリンの実演を交え、音の「粒」が連なり旋律になる時、濁りを含む豊かな音色が生み出されるという話に会場は沸きました。続く演奏は、ラヴェルの弦楽四重奏曲 ヘ長調から、第1楽章(Allegro moderato)と第2楽章(Assez vif. Très rythmé)。アンコール曲は、モーツァルトの「2つのヴァイオリンのための12の二重奏曲」第2楽章でした。
2017年6月3 日(土)JT生命誌研究館 展示ホールにて収録
紹介資料
クレジット
出演者:中村桂子(現JT生命誌研究館名誉館長、お話)
長岡京室内アンサンブル 森悠子(音楽監督,Vn.)・石上真由子(Vn.)・長瀬大観(Vn.)・ 野澤匠(Va.)・中島紗理(Vc.)
ご覧いただいた来館者の方から寄せられたご感想
- とても良い響きの空間。すばらしかった。 ・ビーバーからモーツァルト、ラヴェルと移っていった音楽。音の粒子を ”聴くこと” の大切さが心に響ききました。トークは未知の世界へ導かれ、若い4人の演奏に生命を頂きました。
- すばらしい空気の中ですばらしい響き、重なる音の深み、聴かせていただきました。音は生命だと感じます。
- 生命と音楽のマンダラ、いい出会いをいただきました。
- 息遣いまできこえる空間でのコンサートは贅沢な時間でした。お話ももっと聞きたかった。
- こんなに素敵なアンサンブルが近くにあるとは知りませんでした。音楽が、音の「粒」の連なりから、そして生きものが「細胞」からなる、というBRHらしいお話が聞けたのも楽しかったです。
- このホールで色々な、文化的な催しが開かれることを地元の人間としてうれしく思います。生物(生命)と芸術(美術・音楽)に「共通」があって、ハーモニーしているということを、具体的に音楽を聞きながら体現できました。すばらしいことだと思います。