1. トップ
  2. 催し
  3. イチジク植物と送粉コバチの関係:本当に「1種対1種」?

研究員レクチャー イチジク植物と送粉コバチの関係:本当に「1種対1種」?

詳細

日時

2006/04/15(土) 14:00〜15:30

場所

JT生命誌研究館 1Fコンファレンスルーム(入館無料)

出演者

蘇 智慧 研究員
(DNAから共進化を探るラボ)

参加方法

※参加無料
※事前申込不要

担当

蘇 智慧 室長(〜2024/03) (DNAから進化を探る 系統進化研究室 

内容

 昆虫と植物との共生関係の中で、イチジク属とその送粉コバチとの関係はもっとも厳密的で、種特異的である。1種のイチジク植物にただ1種のコバチが送粉していると言われている。現在世界中に750種程のイチジク植物が分布しているが、この「1種対1種」の関係はいつ成立しただろう。もし祖先種の段階でこの関係が成立していたとしたら、その後両者の種分化はどのように起きていただろうか。その種分化の歴史をわれわれが探っている。また、1種のイチジク植物に本当に1種の送粉コバチしかいないのか。形態的に1種と見えても、実際に高い選択圧を受けて、コバチの形態の収斂や平行進化が起きているかもしれない。これを解明するためには、各種のコバチの遺伝的変異を詳しく調べる必要がある。実は日本産の送粉コバチとメキシコ産のコバチを広範囲にわたって調べてみると、思わぬ結果が得られた。詳細は研究員レクチャーの時にお話しをしたいと思っている。
 この研究員レクチャーでもう一つ話したいのは小笠原諸島のイチジク属植物とそのコバチのことである。小笠原諸島には3種の固有種と1種の移入種が生息している。固有種といってもルーツがないわけではない。「何かの種」が「どこか」から島に進入して、長い時間が経って別種になったのは島の固有種である。小笠原諸島固有種のルーツはDNA解析によって明らかになった。移入種については面白い現象が起きている。その移入種はガジュマルという種で、南西諸島に広く生息している。明治初年に防風林として小笠原諸島に移入・栽培されて以来、近年までは種子を作ることはなかった。何故かというとガジュマル送粉コバチがいなかったためである。しかし、最近様子が違う。小笠原諸島のガジュマルは花を咲かせて、種子も作るようになった。その送粉コバチの正体は? 研究員レクチャーでお聞き下さい。
固有種3種
(写真は「小笠原植物図譜、豊田武司編著、アポック社」より)
(左上)
F. boninsimae トキワイヌピワ 固有種3種父島列島(西島、東島除く)/平島
(右上)
F. nishimurae オオトキイヌビワ 父島(rare)/母島(rare)
(左)
F. iidaiana オオヤマイチジク 母島 (very rare)
 
移入種1種(野生化)
F. microcarpa ガジュマル 父島/母島

このイベントを開催する研究員をご紹介

蘇 智慧 (室長(〜2024/03))

  • 研究分野 系統・進化・種分化・多様性 学位
  • 学位 博士(農学)

カイコの休眠機構の研究で学位を取得しましたが、オサムシの魅力に惹かれ、進化の道へと進みました。1994年から現在に至るまで、ずっとJT生命誌研究館で研究生活を送ってきました。オサムシの系統と進化の研究から出発し、昆虫類をはじめとする節足動物の系統進化、イチジク属植物を始めとする生物の相互作用と種分化機構の研究を行っています。

DNAから進化を探る 系統進化研究室 

レクチャーについて

JT生命誌研究館の研究員をはじめとするさまざまな分野の研究者が、探究と発見の日々をお話します。
進行形の研究、そこで考えたこと、苦労話など研究を身近に感じる絶好の場です。
レクチャーを聞いた後には、会場も一体となって話の輪が広がります。入場無料です。