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BRH公開セミナー 「トンボのDNAを調べて何が分かるか? ――種間雑種の判定と遺伝子浸透、形質置換の考察――」

詳細

日時

2007/08/20(月)

出演者

二橋 亮(農業生物資源研究所)

内容

「トンボのDNAを調べて何が分かるか? ――種間雑種の判定と遺伝子浸透、形質置換の考察――」
日時
2007年8月20日
場所
JT生命誌研究館
講演者
二橋 亮(農業生物資源研究所)
内容
トンボ目昆虫は、近縁種間でも形態や行動に多様性が見られるグループである。これは、種の認識が基本的に視覚に頼っているためと考えられるが、一方で、異種間での連結や交尾の観察例も多く存在し、種間雑種と思われる個体もときどき採集される。しかし、形態的特徴のみでは、本当に雑種であるのか、何と何の雑種であるのかを判定することが極めて困難である。演者は、核およびミトコンドリアDNAの解析から、複数の例でトンボ類の種間雑種の判定を試みた。異種間で産卵された卵から得られた雑種の解析の結果、核DNAは両親の配列が混ざっており、ミトコンドリアDNAは母親由来であることが確認できた。この結果をふまえて、野外で採集された雑種個体の解析したところ、雑種であるかどうかに加えて、多くの場合は親の組み合わせ(どちらの種が母親であるか)も特定できた。また、雑種の生じやすさ(たとえばマユタテアカネ♂が他種♀と雑種を作りやすいなど)も確認できるようになった。しかし、非常に近縁な種間(カワトンボ属やギンヤンマ属など)では、ミトコンドリアDNAが種差を反映しない例(したがってどちらの種が母親だったか特定できない)も見られた。これは雑種を介してミトコンドリアDNAが種を超えて広まった結果と考えられる。雑種ができるほど近縁な種が同所的に生息する場合、雑種形成を回避するメカニズムが発達することが予想されるが、カワトンボ属とアカネ属を例に、近縁種間における翅色と体色の形質置換の例を考察したい。