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映画「水と風と生きものと」を観て

生命誌研究館を訪ねるたびに、これと似た空間は世界のどこを探してもないと感じる。生命科学が「生命誌」へと進化して身近ないのちと一気につながったように、研究館ではその最先端の研究と、私たちの驚きや感動がつながり、ともに38億年の時間に連なっている実感へと誘われる。

日々、生命誌を編み続ける研究者たちと、それを訪ねて集う大人や子どもたちの穏やかに満たされた笑顔と、小さな生きものたちの輝きに出会う幸福な2時間である。

髙村 薫(小説家)

サイエンティストの大切な使命は、自らの発見あるいは考えを発表し、それを公の知識として共有可能なものにすることである。報告ないしは記述のできるサイエンティストは多いが、しかしそれを表現にまで高められるサイエンティストはきわめて稀である。表現できるためには、知ることだけではなく、それを感じ取る能力がなければならない。自らのすべての感覚を動員して自然の襞を感じ取り、感動できること。中村桂子さんは、それができる稀有なサイエンティストである。

永田 和宏(歌人・細胞生物学者)

5月25日、映画完成の試写中に大きな地震が起きた。神話や民俗学を拠りどころに大震災を考えてきた赤坂憲雄氏と中村桂子さんの対話の場面だった。村人は、大破壊の跡から祭りの面や道具を拾い、繕い、伝統の鹿踊りを舞う映像が続く。地震は、この映画を貫く生命は時間的な存在であり、断片では語れない大きな物語を紡ぎだす中村桂子さんへの地球規模の共振。偶然は時として意味のある偶然になる。知的興味を100%満足させる快作。
「天のしずく 辰巳芳子いのちのスープ(2012年)」
「大津波 3.11未来への記憶(2015年)」

河邑 厚徳(映画監督)

時に詩人であり、科学者であり
時には友達のような中村桂子先生は
生命誌そのものである。
生命誌は、時間が持っている構築的な役割を
さらに時間は人間が自然の中に属していることも証明している。

何を恐れていますか!
光あり、
水あり、
風が吹いているのに…。

崔 在銀(造形作家)