アクチビンの濃度に依存して出来上がる、様々な生きものの組織や器官
図1. アニマルキャップ(未分化細胞)から作った腎臓の尿細管(矢印)。
アクチビン(10 ng/ml)とレチノイン酸(0.1 mM)で3時間処理し、4日間培養したものです。アニマルキャップから作った初の人工の器官です。
図2. アニマルキャップから作った膵臓。
アクチビン(100 ng/ml)とレチノイン酸(0.1 mM)で処理したものです。誘導した膵臓組織は、インスリンやグルカゴンを産生していました。上段は正常胚の膵臓、下段はアニマルキャップから作った膵臓。
図3. アニマルキャップから作った拍動する心臓。
アクチビン(100 ng/ml)で処理し、7日間培養したものです。心臓の中は、心房と心室ができてきています。
図4. ツメガエルの心臓が作られる時に関わる遺伝子。
発生に伴ってそれぞれの遺伝子が、順序よく、ドミノ倒しのように次々と発現します。一番初期に発現するHMG2、GATA4、NKx2.5などは、心臓形成に必須のマスター(鍵)となる遺伝子です。
図5. マウスの心臓が出来る時に関わる遺伝子。
多くは、ツメガエルと同じ遺伝子(赤字)が働いていることが分かります。
図6. 作った心臓の移植。
もともとあった心臓を除去した後に、人工的に作った心臓を移植しても、拍動して機能しています(矢印)。
図7. 作った心臓を腹側に移植。
心臓が無い腹側に、作った心臓をしても(黄色の矢印)、もともとあった心臓(赤色の矢印)と同調して拍動します。試験管内でつくった心臓が、生体内でも働くことが証明されました。
図8. ツメガエルの未分化細胞から作った眼球。
正常胚から発生した幼生の眼球と同じように(上の写真)、アニマルキャップから作った眼球にも水晶体、神経性網膜、色素性網膜が観察できます(下の写真)。
図9. 作った眼球をツメガエルの幼生に移植。
移植した眼球からは、中枢神経に向けて神経(赤色)が延びています(左上の写真)。光を当てると体色が茶色に変化することから、変態して成体になった後も眼球が機能している事が分かります(左下の写真)。両眼球を除去した個体では、光を当てても反応しません(右下の写真)。
図10. 未分化細胞から頭部と胴尾部を作製の方法
アニマルキャップをアクチビン(100 ng/ml)で処理し、短時間おいた後に別のアニマルキャップでサンドイッチ状にくるむと胴尾部が出来ます(上の図)。長時間おいた後に行うと、頭部ができます(下の図)。
図11. 作った頭部と胴尾部の組織切片。
正常胚から発生した幼生の頭部と胴尾部と同じように(上の写真)、作った頭部にも脳と眼球やセメント腺が見られます(左の写真)。また、胴部にも後脳、耳胞、消化管が(中央の写真)、尾部にも脊髄、脊索、消化管が見られます(右の写真)。
図12. アクチビンの濃度を変えて、人工的にオタマジャクシの体全体を作製。
アクチビンの濃度勾配を人工的に作り、アニマルキャップを培養します。
図13. 人工のオタマジャクシの幼生。
アクチビンの濃度勾配によって、正常なオタマジャクシの幼生に良く似た人工のオタマジャクシを作ることが出来ます。外形からも頭尾軸、背腹軸、左右軸など生き物の形ができています。
図14. 人工のオタマジャクシの切片。
アクチビン処理すると、脳、耳胞、脊髄など、頭部から尾部に至るまで全ての器官が出来ています(左の写真)。アクチビン処理しないと、不整形表皮のままで分化しません(右の写真)。
図15. マウスの未分化細胞であるES細胞から膵臓を作製。
ツメカエルのアニマルキャップと同じように、アクチビンとレチノイン酸で処理することによって、マウスのES細胞から膵臓などが作られます。作った膵臓は、インスリンやグルカゴンを分泌することが確かめられました。矢印は、膵臓の腺構造を示しています。右の映像は出来てきた腸管(黄色の矢印)と膵導管(赤の矢印)と膵臓(黒の矢印)です。
図16. マウスのES細胞から気管と絨毛を作製。
マウスのES細胞から作られた気管の上皮細胞層には繊毛細胞も出来ました(右の写真)。正常な気管(左の写真)と同じように、繊毛(矢印)が数多く観察できます。
図17. マウスのES細胞から作った気管にある繊毛の電子顕微鏡写真。
組織の断面図を観察すると、繊毛が数多く生えています(上の写真)。繊毛の断面を水平方向(左下の写真)あるいは垂直方向(右下の写真)から観察すると、バクテリアからヒトまでが共通にもつ9+2の微小管構造が観察できます。
図18. アニマルキャップからの器官形成と形作りをまとめた模式図。
アニマルキャップ(未分化細胞)からアクチビンの濃度依存的に様々な器官形成でき、アクチビンとレチノイン酸の2つの因子の組み合わせで前腎や膵臓もできます。さらに、アクチビンで処理した後、未分化細胞と一緒にサンドウィッチ法により頭部や胴尾部ができ、濃度勾配によって幼生型までもできる。