論文
Murato Y. and Hashimoto, C . (2009)
Xhairy2 functions in Xenopus lens development by regulating p27xic1 expression
Dev.Dyn. Vol. 238, 9, 2179-2192
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/dvdy.21883/abstract
解説
脊椎動物の眼は、その構成要素を網膜と水晶体(レンズ)に大別できる。網膜はその由来を間脳の一部を辿ることができるが、レンズは表皮の一部から形成される。古典的なモデルでは、発達中の網膜である眼胞が表皮に接触することにより、その表皮がシグナルを受け取りレンズに分化すると説明されている。以来、シグナルの物理的実体の同定に力が注がれてきたが、どのような表皮でも眼胞からのシグナルを受け取ればレンズに分化できるわけではないという重要な事実が軽視されてきたことを指摘せねばならない。つまり、シグナルの受け手としての表皮にも適性(competence)があるわけだが、この実態はほとんど明らかにされていなかった。私たちがこれまで注目してきたXhair2 遺伝子の機能解析の結果、眼の形成過程において、知られている限り最も早い時期からXhair2がレンズ形成に特異的に必要とされることが明らかになった。このメカニズムとして、表皮の一部でXhair2が発現することによって、分化状態を促進し細胞周期を停止させる活性のあるp27xic1の発現が抑えられているということを見いだした。以上の結果から、Xhair2が存在することにより、レンズになるべき表皮の細胞が、シグナルを受け取るまで未分化で増殖可能な状態を維持していることが示唆される。これらの状態が、レンズ適性の実態の一部ではないかと私たちは考えている。