論文

Yanagi T. Ito K. Nishihara A. Minamino R. Mori S. Sumida M. Hashimoto C. (2015)

The Spemann organizer meets the anterior-most neuroectoderm at the equator of early gastrulae in amphibian species

Develop.Growth Differ . DOI: 10.1111/dgd.12200

解説

 13年前に私たちは、アフリカツメガエルを用いた研究から両生類の原腸形成過程を示すモデルを公表しました(Koide et al. 2002)。その論文では、原腸胚のかなり早い時期に胚の赤道領域で頭部オーガナイザーが予定頭部神経と接することを示しましたが、一般に信じられているモデルと大きく異なることや、ツメガエルが両生類の世界では特殊だと考えられていたことなどから、世界的に受け入れられずにいました。そこで今回は、ツメガエルで提示したモデルが両生類に一般化できるかを確かめるために、広範囲の両生類種を用いて解析を進めたところ、研究に用いたすべての両生類において、ツメガエルと基本的に同じ機構で原腸形成が進んでいることが明らかとなりました。

 また、前回の論文では頭部オーガナイザーと予定頭部神経組織が接する時期と場所について明らかとしましたが、それ以前にオーガナイザーがどのような動きにより予定頭部神経組織と接するのかについては不明なままでした。今回、オーガナイザーの動きを詳細に解析したところ、有尾両生類(アカハライモリ)・無尾両生類(ツメガエル)において新しい組織運動を見いだし、サブダクション&ジッパリングと名付けました。このオーガナイザーの動きは、原索動物の動きと高い類似性を示し、またニワトリのヘンゼン結節の動きにもよく似ていることがわかり、両生類の原腸形成機構が脊索動物門に共通するモデルになりうる可能性が出てきました。鳥類や哺乳類の原腸形成過程は細胞増殖を伴い、胚自体の大きさが変化しますので、組織の動き自体を抽出するのが難しいのですが、この両生類のモデルに当てはめて見直すことで本質的な解析が可能となるかもしれません。

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