論文
Harata A. Nishida H. Nishihara A. Hashimoto C. (2016)
Purinergic P2Y Receptors Are Involved in Xenopus Head Formation
CellBio, 5: 49-65 DOI: 10.4236/cellbio.2016.54004
http://www.scirp.org/Journal/PaperInformation.aspx?PaperID=73007
解説
脊椎動物の頭部構造は、外部感覚器官を持ち、脳が頭蓋骨によって覆われているといった無脊椎動物は持たない複雑な頭部構造を進化の過程で獲得してきました。私たちは, 脊椎動物がどのようにして特殊な頭部構造の獲得し得たのかを知るためのヒントとして、 脊椎動物にのみ存在し, 脊椎動物種間での保存性が高く、且つ、将来頭部となる領域に限局して働くアフリカツメガエル胚のP2Y受容体の役割に注目してきました。P2Y受容体とは、Gタンパク質共役型受容体の一つであり、細胞外に放出されたヌクレオチドによって活性化され細胞内の環境を調節しています。これまでの研究では、初期発生過程におけるP2Y受容体の役割はほとんど明らかにされていませんでした。
今回の研究では、アフリカツメガエルのP2Y受容体の中でも特に近縁であるP2Y1とP2Y11が頭部形成に関わる領域に発現することを示し、さらにそれら遺伝子の機能阻害実験を行うことで, それぞれの遺伝子が頭部形成過程において重要な役割を担っていることを明らかにしました。具体的には、両者とも神経領域と表皮領域が決まる原腸胚期から発現が確認でき, その後は, 神経領域や頭部構造の大部分を構築する神経堤細胞やプラコード等に局在していました。また、それぞれの機能阻害を行なうと, 頭部構造の大部分が欠損しており, 頭部形成過程にこれらの遺伝子が大きく関与していることが示されました。さらに、頭部が形成される初期過程で様々な遺伝子マーカーの発現への影響を調べた結果、頭部領域が決まる神経誘導にP2Y1やP2Y11が関わっていることが示唆されました。これらは、脊椎動物にのみその存在が認められる遺伝子である事、また、脊椎動物を定義すると言われる頭部の形成に重要である事から、進化における脊椎動物の出現の際に重要な役割をしたとも考えられます。