論文
Akiyama-Oda, Y. and Oda, H. (2006)
Axis specification in the spider embryo: dpp is required for radial-to-bilateral symmetry transformation and sog for ventral patterning
Development 133, 2347-2357.
解説
オオヒメグモ胚が発生にともなって放射相称形から左右相称形へと転換する仕組みを解析した論文。ショウジョウバエのdecapentaplegic (dpp ) とshort gastrulation (sog ) のオオヒメグモ相同遺伝子の発現パターン及び機能の解析により、クモのdpp が将来の背側に胚外領域を誘導し胚の放射相称性を左右相称性に転換させるのに必要であること、クモのsog が将来の背側からの背側化シグナル (Dppシグナル) に対抗して腹側のパターンを形成するのに必要であることを示唆するデータを得た。これらのデータは、ショウジョウバエとの比較において、少なくとも2つの重要な意味をもつ。1)ショウジョウバエと違い、オオヒメグモではDppによる背側の誘導なしに腹側のパターン形成が進行しないこと。2)ショウジョウバエの腹側のパターン形成はsog の活性をほとんど必要としないのに対して、オオヒメグモの腹側のパターン形成はsog に大きく依存していること。ショウジョウバエとオオヒメグモのこれらの2つの違いは腹側正中線の特異化の仕組みに歴然と表れている。クモの状況は脊椎動物の背側の正中線組織(脊索/神経底)の特異化がBMPシグナルの阻害を必要としている状況と類似している。この論文のディスカッションでは、脊椎動物の脊索と節足動物の腹側正中線組織の進化的関係を考察している。
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